Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    いつかの。

    🎤:🥂👔/🔪:🍓🐥/i7:45/臣太/影日/👹:🔥🎴/好きなものいっぱい/

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 6

    いつかの。

    ☆quiet follow

    ワンドロでボツにしたやつ。いつか完成させたいなあ。

    #ひふど
    hifudo

    「ねえ、独歩にとっての幸せってなぁに?」


    ソファーの下に座った俺を後ろから抱き締めた一二三にそう尋ねられた時、果たして俺は何て答えたのだろうか。
    美味しいものを食べられた時、だとか、休みの日に一日眠れた時、だとか、そういう当たり障りのないことを答えたような気がする。

    本当は違う、本当は違うのに─

    なあ、一二三、俺にとっての幸せは─


    目を覚まさない、もう二度と覚まさないかも知れない、一二三を見ながらそう思った。

    俺の幸せなんて、お前さえいればそれで良かったのに─



    「一二三君が、違法マイクを使った集団に襲われたようだ」

    そう先生から連絡があったのは、残業終わりに駅に向かっている最中のことだった。


    ここ最近、違法マイクを使った通り魔事件が起きていることは知っていた。
    狙われるのは帰宅途中のサラリーマンが多く、そのほとんどが発見された時には意識を失い、金銭がほとんど奪われている状態だった。
    まだ幸い死者は出ていないが、襲われた多くの被害者が未だ意識を取り戻せてないと聞く。

    ニュースでこの事件を知った時、「独歩も気を付けてね」と一二三に言われたことを思い出す。
    そう言ったお前が襲われるってどういうことだよ。


    しかし、襲った方も運が悪かった。

    相手は、シンジュク代表として、第一線で超一流の各ディビジョンの代表と戦った男だ。
    一二三は、彼らのリリックと対抗し、相手の意識を失わせた。そして、自分で警察に通報したそうだ。
    恐らく、その後に意識を失ったのだろう。警察が到着した時には、アイツは既に意識不明の状態だったらしいから。

    そして、犯人グループはその後、病院で目を覚まし、警察に逮捕された。

    それなのに一二三は、ずっと眠り続けている。
    あの日からずっと。


    一二三の担当医である寂雷先生曰く、脳や内臓は一切傷ついてないらしい。本当にただ眠っているだけ。
    違法マイクと言えど、精神干渉の力は変わらない。
    だから、心の問題だろうというのが先生の見解だ。

    ならば、せめていい夢を見ていればいい。女性恐怖症である一二三にとって、この世界はとても生きづらいものだから。だから、せめて、せめて夢の中でだけは、一二三が何も恐れることがなく、幸福であって欲しい。
    起きて欲しいという思いより、いい夢であって欲しい思いの方が強い俺は、大切な何かをどこかへ落としてきてしまったのかも知れない。

    そんな俺に、記憶の中の一二三が問いかける。

    「ねえ、独歩にとっての幸せってなあに?」

    俺にとっての幸せは、一二三に─


    一二三が入院するにあたり、一番問題になったのは、面会時間だった。
    一二三と俺は誰が何と言おうが恋人同士だが、かと言って夫婦ではない。いくら大切な恋人が事件に巻き込まれたと言って、普段の労働環境さえ保証されてない弊社では、休みはおろか定時上がりさえ難しい。
    そのため、最初は面会時間に間に合わず、一二三に会えない生活が続いた。

    そのことを先生は非常に重く受け止めてくださり、特例として時間外の面会を許可してくださった。
    ヒプノシスマイクによる負傷の治療には、身近な人間の外部からの刺激が必要であり、また、俺自身の不眠症のケアの為にも必要なことであるといった、もっともな理由をつけてくださったのだ。
    先生には、本当に頭が上がらない。


    そして、俺は今日も残業を可能な限り早く片付け、そして、病院で眠る一二三に会いに行く。

    今日は目覚めるかも知れない、目覚めたら何て声をかけよう。とりあえず、嫌味の一つや二つ言ってやりたい。お前はいつも俺を振り回して、と。心配ばっかかけやがって、と。
    でも、実際は泣いて何も言えないのだろう。嬉しくて、頭がグチャグチャになって、言葉なんて出てこなくて。起きがけに見るアラサー男の泣き顔なんて、普通に気持ち悪いだろうけど。

    そういろいろ考えてはみるものの、俺の言いたいこと、言って欲しいことなんて、たった一つで。

    なあ、一二三。もし、お前が目覚めたら、その時は─


    病院の夜間受付を通り、一二三の病室へ向かう。

    一応、先生に書いていただいた時間外の面会許可書は持っているが、毎日この時間に面会に来るのなんて自分くらいだから、ここ最近はそれを見せる機会も無くなった。
    面倒な手順が一つ減るのはいいことだ。しかし、それだけ長い期間一二三が眠り続けている証明なような気がして。
    俺は、とても悲しい気持ちになった。


    連絡がなかっただけで、目が覚めていないだろうか。連絡がなかっただけで、部屋を移動してないだろうか。連絡がなかっただけで、急変していないか。
    ─誰も、俺さえも側に居ない間に、たった一人でもう二度と会えない場所へ旅立っていないか。

    この不安は一日中胸にあるけど、やはり病室の扉を開ける瞬間が、一番それを感じる。
    俺は大きく息を吸い、扉を横にスライドさせた。


    「一二三」

    ドアを開き、小さな声で名前を呼ぶ。返事はない。
    扉を閉め、今度はベッドの近くから、先程より少しだけ大きな声で名前を呼ぶ。返事は無いが、ベッドで眠っている様子を見ても、昨日と大きな違いはない。 今日も一二三は、まさかヒプノシスマイクの襲撃を受けたとは思えない程、穏やかな表情で眠っている。
    夢の世界は、やはり現実より居心地が良いのだろうか。
    そう思うと、良かったと思う反面、やはり寂しくて。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    いつかの。

    MAIKINGワンドロでボツになったやつ。「え?俺っちと独歩の仲良くなったきっかけですか?」

    何の脈絡もなく投げられた問いに、思わず声が裏返ってしまった。
    そんな俺の反応を気にすることなく、テーブルを挟んで向かいに座った先生は静かに頷く。

    「ああ。そういえば聞いたことがなかったと思ってね。もちろん、幼馴染ということは知っているし、それなりに昔からの付き合いであることは分かっているのだけれど、きっかけは何だったのかと思ってね」
    確かに、自分からは独歩との関係について、ほとんど話したことはない。しかし、
    「独歩からは、何も聞いてないんですか?」
    先生と自分との出会いは、そもそも独歩がきっかけである。最初にこっちに連れて来る前に、自分のことは簡単には話していたようだった。だから、その時に話していそうなものだけど。
    そう思い、聞いてみると、案の定、「独歩君からも聞いているよ」という答えが返ってきた。

    ならば、何故。

    尚も不思議そうな自分を見て、先生はいつもの穏やかな笑顔を浮かべ、
    「確かに、独歩君の主観による一二三君と独歩君の出会いの話は聞いているよ。でもね、私は君の主観による二人の出会いについても大変興味があるんだ。どうやっ 1017

    いつかの。

    MAIKINGワンドロでボツにしたやつ。いつか書き上げたい。「あの、観音坂くん…」

    卒業式の放課後、もう明日からは座ることのない席で俺は本を読んでいた。
    こんな時、教室に残っているのなんて、友達もいない、影も薄い、いてもいなくても変わらない、そんな存在である俺くらいで。殆どの生徒は、友人と別れを惜しんだり、最後の最後の奇跡を信じて想い人に気持ちを告げたりするために、校門周辺にいるはず。そう思っていた俺は、突然かけられた声に、幽霊の類かと思い、なかなか顔を上げられずにいた。

    そもそも、俺が誰もいない教室で一人、こうやって本を読むはめになったのも、あっちこっちで呼び出されて、今はどこにいるのか分からない、何時に来るかも分からない人気者の幼馴染に、「一緒に帰りたいから、絶対待っててね!」と言われたからで、本当は既にもう家に着いて、お気に入りのベッドに転がりつつ、のんびりしているはずなのに。それが叶わなかったばかりか、幽霊と遭遇するはめになるなんて。
    それもこれも、断れ切れなかった俺のせい…隠キャで過ごした俺のせい…俺のせい…俺のせい…。


    そんな思考の海に囚われた、俺が聞こえてなかったと思ったのだろうか。
    もう一度、今度は先程よりいくらか大きな 1783

    いつかの。

    MAIKINGワンドロでボツにしたやつ。いつか書き上げたい。週末の深夜にだけ、我が家にはコーヒーショップがオープンする。

    この店のメニューは、コーヒーだけ。時々、店主の気まぐれでケーキとかピザトーストが添えられていることもあるけれど、でも、それらは買ってきたり、俺自身が作ったものだから、店主お手製のものといえば、このコーヒーしかない。
    本当の中の本当に気まぐれで、たった一度だけ店主お手製のミネストローネを出してくれたことがあったけれど、「パッとしない味だな…」という店主の独断と偏見により、それ以降どんなに強請っても出てくることはない。俺からしたら、店主が俺のために作ってくれただけで、この世で一番美味しい料理なのに。

    なのに、コーヒーだけは毎週、週末に用意してくれる。どんなに連勤が続いていても、週のほとんど終電に間に合わず、始発で帰ってきて、シャワーと朝食だけで飛び出していく毎日だったとしても、必ずコーヒーショップは開店するのだ。俺の、俺だけのために。そう言うと、店主は顔を真っ赤にして「ついでだ」と言うけれど。


    でも、俺は知っている。今、店主の手の中にあるマグカップの中に入っているのは、たっぷりのホットミルクに、ほんの数滴だけコーヒーを垂 1448

    いつかの。

    MAIKINGワンドロでボツにしたやつ。いつか描き上げたい。「次は、終点──駅、──駅。お降りのお客様は、──」


    ガタンと揺られる振動で目を開けると、一瞬、自分が今、どこにいるのか分からなくなった。
    随分、深く寝入っていたらしい。こんなにぐっすり寝たのは、いつぶりだろうか。もう随分と長い時間、寝ていない気がする。
    眠るのが、夢を見るのが怖いのだ。心が弱っている時ほど、夢の世界が優しくて、このまま現実に戻ってこられなくなるのではないかと不安で堪らなくなる。だとしても、今までの俺には、現実に帰る理由があった。でも、今の俺にはそれはない。無くなってしまったのだ。だから、眠るのが怖い。いつか、この現実に戻れなくなる日が来そうで。
    戻りたい理由が無い俺も、まだこの世界に未練があるらしい。でも、それも今日までだ。


    電車のスピードが落ちて、そして、やがて停まった。この駅は、無人駅だから、降りる時に車掌に料金を払うシステムだ。
    全てが電子化されたこの世界で、未だに残るこういったアナログのやりとりが愛おしい。だから、アイツはいつか歳をとって、仕事を辞めたら、こういった地で生きることを望んでいた。女性を極端に怖がる男だったけれど、基本的には人間が好きな奴だ 596

    いつかの。

    MAIKINGここからどう話を展開しようと思ったかさっぱり思い出せないので、ここに供養。あなたが最後の瞬間に思い出すものが、わたしであればいい。
    ほんの一瞬でも構わない、ほんの一部でもいいから、あなたの脳裏に浮かびたい。
    あなたが最後に会いたいと、声を聞きたいと、そう思う存在がわたしであればいい。

    皆に慕われているあなたの最後になりたいなんて、わたしには過ぎた願いなのかも知れないけれど。
    だけど、少しでも叶う可能性があるのならば…。

    だから、わたしは今日も立つ。
    あなたが旅立つこの門に。あなたが帰ってくるこの門に。
    笑顔で送り出して、笑顔で迎える。
    そんな単純なことさえ、明日には出来なくなってしまうかも知れないから。
    もしかしたら、今日が最後かも知れないから。

    ねえ、こんなにあなたが好きなのに。
    臆病なわたしはなかなか素直に伝えられない。
    だから、これはわたしのあなたへの精一杯の告白。
    第三者にどう思われても構わないから、あなたに少しでもこの気持ちが伝わって、そしてほんの少しでもわたしに心が傾いてくれたらば、それだけでわたしは幸せ。

    そして、最後の瞬間にわたしを思い出して。
    そのままわたしをあなたがいる世界まで連れて行って。
    そして、ずっと側にいさせて。

    あなた 514

    いつかの。

    MAIKINGワンドロでボツにしたやつ。いつか完成させたいなあ。「ねえ、独歩にとっての幸せってなぁに?」


    ソファーの下に座った俺を後ろから抱き締めた一二三にそう尋ねられた時、果たして俺は何て答えたのだろうか。
    美味しいものを食べられた時、だとか、休みの日に一日眠れた時、だとか、そういう当たり障りのないことを答えたような気がする。

    本当は違う、本当は違うのに─

    なあ、一二三、俺にとっての幸せは─


    目を覚まさない、もう二度と覚まさないかも知れない、一二三を見ながらそう思った。

    俺の幸せなんて、お前さえいればそれで良かったのに─



    「一二三君が、違法マイクを使った集団に襲われたようだ」

    そう先生から連絡があったのは、残業終わりに駅に向かっている最中のことだった。


    ここ最近、違法マイクを使った通り魔事件が起きていることは知っていた。
    狙われるのは帰宅途中のサラリーマンが多く、そのほとんどが発見された時には意識を失い、金銭がほとんど奪われている状態だった。
    まだ幸い死者は出ていないが、襲われた多くの被害者が未だ意識を取り戻せてないと聞く。

    ニュースでこの事件を知った時、「独歩も気を付けてね」と一二三に言われたことを思い出す。
    そう言 2232

    related works