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    おいなりさん

    カスミさん……☺️

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    おいなりさん

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    ちゅーしてるだけの話。
    ※付き合ってはない2人。

    ##真スミ

    キスのはなし


    何となく、口寂しさを感じて取り出した箱の中身は、いつの間にそうなっていたのか、空だった。

    「めずらしいね」

    階段を登りかけで、蜂蜜色の目をまん丸くしてそう言う真珠は、煙草の煙が苦手な筈だというのに、時折こうして喫煙所へと足を運ぶ事がある。
    その理由なんていうのはひどく単純なのだけど。

    「カスミ、店に居なかったからさ。ここに来たら居ると思って」

    嬉しそうにそう言う。
    付け加えて、他の喫煙者たちがバクステに居たから2人きりになれると思ったし、とも。
    いつもの香りだけを残してぽっかりと口を開いた箱を少しの間見つめていたが、そうしていても新しく煙草が湧いてくるわけでもなし。
    くしゃりと箱を潰して、ポケットに乱暴に突っ込んで、それから真珠に手招きした。

    「おいで」

    その言葉に、素直に走り寄ってくる真珠は本当に可愛らしいと思う。
    だから、こんな言葉を使うべきじゃないのだけれど。

    「カスミ、」
    「真珠が煙草の代わりになってみるッスか?」
    「へ」

    伸ばした手で捕まえた真珠の腕。
    少し引いて、もう片方の手を真珠の頭の後ろへ。
    そうしてすっかり逃げられないようにしたら、後は呼吸も思考も全て奪い去って。
    力の抜けた体を支えながら、屋上に吹く強い風のせいで乱れた髪を耳にかけてやった。

    「風、強いッスね。寒くないッスか」
    「……ん、だいじょうぶ……カスミは?」
    「うーん、もう少し補充したいッスね」
    「……おれも」

    真珠の、自分よりは細い腕が首に回された。
    閉じられた瞼。
    長いまつ毛が頬を掠める。
    ビルの谷間、夕陽が落とす濃い影の中で、お互いの熱だけがやけにくっきりと鮮明に感じられた。



    end.
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