誘拐犯と優等生 私がその子に目を奪われたのは、言うまでもない『綺麗な子』だったからだ。
すとんと丸みを帯びた頭部は遠目から見ても小さい。さらさらと風を通す髪には天使の輪がある。黒の半ズボンから伸びる脚は細く、小学生男児にしては珍しく傷ひとつなかった。
何より驚いたのは、目鼻立ちが整っていたこと。シャープな輪郭と、小さな口元からこぼれる笑顔。くりっとした大きな目、それを縁取る睫毛は少女のように長かった。完璧な見てくれをしていた。
性格は大人しいようだった。彼と話している子供は、気弱そう、真面目そうな、といった印象を与える子ばかり。やんちゃな子とは付き合わず、かといって暗くもない。彼自身は太陽のような子だった。
彼はいつも、バス停に一人で現れる。それまで話していた友達に「バイバイ」と手を振り、ランドセルのベルトをしっかり握って、てくてくと歩いていく。
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