「カイン」
「……はい」
「どうして私に昨晩の事件を報告しなかった」
「不確定要素が多いので、殿下を不安にさせたくなく……」
「私は随時報告しろと言った」
朝カインが城に行くと、部下たちが青ざめた顔でカインの名前を呼ぶ。また『事件』が起こったのかと思ったが、どうやらアーサー王子がカインを呼んでいるとのことだ。部下たち曰く、「事件の件でお怒りになられている」との事であったがー……。
(……これは怒っているというより拗ねているな)
まだ可愛らしさとあどけなさが残る13歳の王子は、窓際の自席に座りながら昨晩の事の顛末を聞いている。
『事件』というのは、城下で起こっている連続強盗事件の事である。手口が巧妙であり、また魔法を使っていたという証言もある事から、魔法使いが犯人ではないかと言われている。アーサーは心を痛め、自分も事件解決に乗り出す事を表明した。周りは危ないと反対したが、カインだけは「一緒に解決しよう」とアーサーを受け入れた。
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