『花縮砂』本格的な夏の日差し。
青々とした森の中は、一年で一番にぎやかな音に満ちている。いのちを巡らすための歌だ。
現在はいら達が住まう梵納寺を管理してくれている堂守は、この生命力溢れる季節に、近く誕生日を迎える。
昨年も感謝の言葉は伝えたが、せっかくならば記念日には贈り物へ気持ちを込めるのもよいらしいと知った。以前に衆生の学園を模した世界へ入り込んだ時に、バレンタインという気持ちと共に贈り物を一緒に届けるイベントがあったのだ。
もし贈り物をするとしたら──例えばどんなものが良いのだろうか?
下調べを行うため、波夷羅は図書館へ足を運び、誕生日に関する書籍をめくった。
「誕生花か……」
365日それぞれに誕生日へあわせた花があるらしい。最初に手に取った本から共通して紹介されていたので有名な知識のようだ。
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