別れる男の部屋に、本を一冊置いておきなさい 部屋の本棚の端を、じっと見つめる。
腰くらいの高さに僕の背丈ほどの幅がある本棚には、新書や重厚なミステリ、文学賞の候補作たちが規則正しく並んでいる。その横で我が物顔で居座っているのが四六判のライトノベルだ。目が痛いくらいに鮮やかな背表紙も、やけにスタイルのいい女の子が可愛らしく微笑む表紙も、この棚では一際存在感を放っている。
自分からはあまり手に取らないジャンルの本がこの部屋の住人となったのは、いったいいつからだっただろうか。
* * *
つい先日この部屋の合鍵を置いて出て行ったあの人は、本はあまり読まない人だった。はじめてこの部屋に足を踏み入れてこの棚を見たときの、
「うわあ、すごいね……」
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