Sandwich and Romance郵便受けを開けたら中に見知らぬ荷物が置かれていた。クラフト紙の紙袋の中にラップと食器洗い洗剤が入っていて、〝先日はお世話になりました〟という女性らしい丁寧な文字でメモが貼り付けられている。差出人には心当たりがあった。ちょうど出久の上の階に住んでいる女の人だ。先日、鍵をどこかに落として困っている所に遭遇し、出久が浮遊でベランダまで送り届けたのだ。お世話になりました、というのはきっとその時のことだろう。別にお礼を言われるほどの事じゃないのに律儀な人だなと思っていると、エントランスに誰かが入ってきた。目が合うなり不機嫌そうに眉を寄せたのは、現在なぜか出久の隣に住んでいる幼馴染の勝己だ。ちょうど今仕事帰りなのだろうか。出久を見ても特に何か言うでもなく、淡々と隣の郵便受けのダイヤル錠を回した。それからふと出久の手元に視線を移して、「何だそれ」と口にする。
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