一週間の折り返しも過ぎた木曜日の午後。
いつもと同じように涼しい顔をしてパソコン画面と向き合う緑間の姿は、ピンと伸びた背筋の美しさに疲れを感じさせることもなく、社内の一部から注がれる憧憬の眼差しもまた、いつもどおりであった。
しかし、その数分後。いついかなる時もプレッシャーやトラブルにも動じない広い背中がビクッと震えた。
一斉に向けられた視線が気遣わしげに表情を伺えば、眉間には大きくシワが寄せられている。
余程難しい案件なのかと、しかし緑間真太郎であれば必ず成し遂げるだろうと、そっと信頼や激励を寄せて各々の業務に戻っていくのであった。
緑間本人はそれどころではない。
この世には絶望しかないのかと、その逞しい体の内は嵐の如く荒れ狂い、情緒を粉々に吹き飛ばしていた。
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