冬武のバレンタイン小話 昼休み逃げるようにタケミチの手を引き駆け込んだ準備室。ここは準備室と言うよりは、倉庫。しかも、使わない物専門の。1箇所窓の鍵が壊れているので常に開いていて、中からつっかえをすると誰も入れない。それはこの事を知っている人間の使用中の合図。
そこへ逃げ込み一息ついて、ハッとして身体が固くなる。だって、タケミチの弁当が入った大きいカバンから見えたのが可愛いラッピングされたもので、それは今日がどういう日かを象徴するものだったから。
そして、沸々と怒りが沸き起こるものでもあった。見るからに手作りのチープではあるが、頑張ったのだと分かるバレンタインチョコ。
どうして受け取ったんだ? 俺は断ったのに! 八方美人! そんな感情とともに俺はやっぱりダメ? 大好きなのは同じなのに男より女の子方が良かった? その子は可愛かった? そんなのが頭を占領する。
そう思うと、タケミチを本がぎゅうぎゅうに詰まった、埃のうっすら乗った棚へ押し付け、無理やりキスをする。
「千冬? どうした? えっ、ち、ちふゆ……! ちょっと待って……!」
「ん、タケミチ……」
まさか学校で盛るなんて信じられない。そんなことしてる奴は愚か者だと思っていたのに、その愚か者に落ちてしまうとは。嫉妬とは実に厄介だ。
ベルトの隙間から手をねじいれ、下着越しに両手で臀を揉む。
「ちょっ……! ち、ふゆ、ダメだよって学校だし、昼休み……!!」
「相棒、タケミチ、好きだ」
「千冬っ」
硬く、熱くなった下半身をタケミチの太ももに擦り付けると赤い顔が益々赤くなった。
「だめか、タケミチ」
「っ、だ、だめ……」
「なぁ……?」
「はぁ……っ、ちふゆ……」
ベルトに手をかけジッパーをおろし手を離せばカチャンと重い音をさ床に衝突。
俺の相棒、俺のタケミチ。マイキーくんが見つけたとしても、相棒は俺の。誰の側に立つよりも俺の側がよく似合っている相棒。なのになんで意地悪するんだよ……。
少し盛り上がった前を下着の上から爪先で撫でればびっりと体が跳ねる。
「タケミチ、感じてる……?」
「っ……、はぁ……ヤダ……」
「なぁ? 気持ちいい……?」
「もっ……もっ! ホントにやめろって!!」
「ってぇー!!!」
頭をグーで殴られる。
「ほんとバカ! 千冬のアホ!! 学校だぞここ!!」
落ちてたズボンを慌てて持ち上げ、ベルトを締める。
「……知ってる……」
お互い興奮してテントを張ったそこが主張している。ここで辞めるなんて、相棒は酷だ。
「……続きは……千冬の家……ならしてもいい……! あと、これ、千冬……沢山貰ってると思うけど……!!」
見るからにチープで、でも頑張ってラッピングしたのが分かる形の歪な生チョコが差し出される。
「え……」
「バレンタイン……だろ? お、俺の手作り……!! 綺麗じゃないけどさ、千冬こういうの好き、かと思った、から……!!」
顔を真っ赤にする相棒。
「タケミチ!! 嬉しい……!! 俺、相棒からのチョコしか貰ってない……!!」
勢いよく抱きつくと後ろによろけ、そのまま床に座り込む。
相棒、俺のタケミチ。
「そんなに喜ばれるなんて思ってなかったから、嬉しい。で、今日は、家、行っていい……?」
「当たり前だ相棒! まさか、普通に帰れるとか思ってんじゃはいよな? この続き、ゆっくりしよう……?」
「……うん……。千冬、なんか怒ってたけど、気分なおった……?」
「おう!」
あれだけモヤモヤした物体が、今は天にも昇る程に浮上させてくれる物体に変わるなんて。恋とはとても現金だ。
「なぁ相棒。マイキーくん達にも……あげるのか?」
「うん。一応ね! でも、手作りは千冬だけだよ。というか……これしか上手く形にならなかったから……。ちふゆは、俺の彼氏だし……!!」
噛み付くようにキスをして、心の中でマイキーくん達に舌を出す。