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    suika_disuki

    @suika_disuki

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    suika_disuki

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     タケミチは荷解きを終えて大きく伸びをする。
     高校を卒業し、就職してやっと思った理想に近い住まいに身を移せた。屈折うん十年、とまで行かないが三年もかかった。
     先月まで暮らしていた安アパートは隙間風や壁が薄いためか人の気配を常に感じて全く家の中でも落ち着けなかったのだ。よく三年も我慢したと褒めてあげたい。
     ご近所、というか左右上下。いや左右と階下には挨拶しておくべきかと考えるが都心でそんな事する必要ないかと結論を出した。ダンボールを出すため纏めて外へ出る。
    「うわっ!!」
    「えっ!?」
     いきなり人とぶつかり、よろけてこけそうな瞬間体を引かれ難を逃れる。
    「すっすみません!!」
     明らかに勢いよく出てきたのは相手だがタケミチはいつもの癖で謝罪をする。
    「いや、俺が周り見ないで出たから謝るのはこっちだ。俺三ツ谷隆。ごめんな、怪我とかしてねぇか?」
     垂れ目で少し髪の長い優しげなお兄さんだった。
    「い、いえ! 俺もちゃんと見ていなかったから……! 俺今日引っ越して来たばかりのタケミチ、花垣武道って言います。よろしくお願いします」
    「タケミチか、よろしくな。引っ越してきたばっかりなんだ? 通りで賑やかだと思った。しばらく隣空いてたからやっとお隣さんができて嬉しいよ。よろしくな?」
     ニコリとする顔はとても温かく穏やかで、髪色から少し身構えていたがいい人そうでよかった。
    「ゴミ捨て大変だろ? ぶつかったのも何かの縁だし手伝うわ」
    「えっ!? いや、そんな大丈夫ですよ!!」
    「遠慮すんなんってお隣さん。1人で荷解き大変だろ? ゴミ捨ても一回で済めば楽だしほら、中のゴミ袋全部持って来い」
     でも、そんな、なんてゴニョゴニョ言っている間に両手に持っていたダンボールが強引い三ツ谷さんの手に渡り、ならもう一層のことお言葉に甘えようとゴミ袋を取りいく。
    「他にもうないのか? 遠慮しなくていいぞ」
    「それがまだ全然荷解きできてなくって。とりあえず着替えと寝るのに必要なやつだけしか開けられなかったんすよ」
    「あはは、タケミチらしいな。明日俺暇だし手伝ってやろうか? ここがゴミ捨て場な。看板でわかるけど生ごみはアレで、資源と粗大はこっち。生ゴミはいつ出して良いけど資源と粗大は週に一度曜日決まってるから気を付けろよ?」
    「手伝いは流石に悪いっすよ。意外と出せる日が多いんですね」
     出会ったばかりな上人は良さそうだが、多分歳上の三ツ谷さんに流石に片付け手伝って、なんて言えない。やんわり申し出を断る。
    「……そっか。そうだよな! 悪りぃ俺妹がいるからついいつもの癖で……」
    「あはは、やっぱりお兄ちゃんなんすね。俺一人っ子だけど三ツ谷さんがお兄ちゃんだってすぐ分かりました」
     目がこうを描き笑っている。
    「兄ちゃんだと思って頼ってくれよ。そうだ、今日のお詫びと新居祝いに飯連れてってやるよ。ここら辺の事知らないだろう? 安くてうまい店あるから、どうだ?」
     正直、知り合って10分の相手。気まずい、と言うのが正直な感想だった。でも引っ越したばかりで冷蔵庫もカラ。これからゆっくり開拓していこうと考えていたが一見さんで入る勇気はあまりない。
    「うーん……。三ツ谷さん……迷惑じゃないですか?」
    「面倒なら最初から誘ってねぇって! よし! なら準備できたら俺の部屋来てくれるか?」
    「えっと。なら17時前後にお伺いしますね!」
     またな後でな! そういって部屋に入るまで見送られる。
     人のいい三ツ谷さんに少し危機感を持つべきじゃないかな? 他人のことは言えないが、見ず知らずの人間に優しくしすぎて苦笑いが出る。周りからよくお人好しすぎると怒られるが彼ほどではない。
     ここでの生活は少し楽しくなりそうで、いい物件を見つけたと広く、真新しい匂いに満たされる。
    「これからの生活が楽しみだなぁ」


     戸惑った笑顔をこぼし部屋に消えていったタケミチを見送る。
     少し遅れて部屋に入りタケミチが暮らす部屋が一望できるよう設置した覗き穴を見るとニコニコしている可愛いタケミチ。
     前の部屋は壁が薄すぎて他のか、見すぎたのかこちらの視線にふと気づいている瞬間が多くなっていた。
    「タケミチ、やっと俺の隣に引っ越してくれたんだな……これからずっと一緒に過ごそうな」
     壁から顔を離し壁をに隙間なく貼った笑顔のタケミチにうっとりする。
     写真でも十分可愛いが、生のタケミチは比にならない可愛さだった。飾らない洗濯石鹸の匂いも想像通りで、触れた体は思ってたより柔らかかった。
    「俺も楽しみだよタケミチ……」
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