世界の果てには行きたくない(これで)ヘミングウェイが借りているログハウスの近所の家の配管に猫が入っていたのだが救出された。猫はヘミングウェイが預かることとなった。首輪をつけていて迷子札もついていたのだが書いてある電話番号にかけてもらったら使われていないと出た。
「この猫、人懐っこいし何なら俺たちで飼おうぜ」
「勝手に決めるな」
「良いだろう? アーネスト」
フィッツジェラルドが猫を、ジャパニーズボブテイルの猫を撫でる。茶色い猫だ。猫が鳴く。
猫は可愛がるものだということは魂が理解している。フィッツジェラルドに言われるのが嫌なだけだ。
猫について進展があったのは、図書館でのことだ。
「猫の飼い主が見つかっただと?」
「ええ。電話が来たの。島田君と未明が寄った店の張り紙にあったのよ。三十キロ先のところ」
「……三十キロ?」
「三十キロ。飼い主は仕事中だけどもうじき終わるって」
橙髪の司書がヘミングウェイに伝えてくる。島田清次郎と小川未明、二人が立ち寄ったおにぎり屋さんにあった張り紙でにたような猫だと話していたのだ。清次郎がかけた電話番号を覚えていて、電話が違うとなっていたが、首輪の電話番号の方が古かったという。
「すぐにあわせてやらねえとな。しかしどうする? バスとか使うか?」
「猫を怯えさせるわけにはいかないが」
「ワタシに任せるんだよ」
猫を運ぶことにしたが移動手段をどうするかとしていると声がかかった。山本有三だった。
そして。
「一回のってみたかったんだよ!」
「……目立ってないか……?」
猫はペット用のキャリーけーす入れて助手席に、山本は運転席で運転をしている。山本は運転免許を持っていた。彼が運転しているのは軽トラで、フィッツジェラルドとヘミングウェイは荷台に乗っていた。
「晴れてるし。いい運転日和だぜ。俺も免許が欲しい」
「この軽トラは図書館のものなのか」
「便利だから購入しておいたらしい」
車で移動することになったが、軽トラに乗りたいと言い出したのはフィッツジェラルドである。
晴れているから荷台に乗っていてもいいものの目立つ。
「ギャツビーのところじゃ乗れないからな」
「アイツなら作れるかもしれないが絶対に戸惑うからやめろ」
ニューヨークに軽トラ、絶対に合わない。無理であるしギャツビーは戸惑うだろう。作品の雰囲気ぶち壊しだ。
「このまま世界の果てに行かないか?」
「猫を連れて行くしこれで世界の果ては嫌だ」
「他の車ならいいのか?」
問われた。
ヘミングウェイは答えずにいた。車が走る。
目的地にたどり着き、猫は飼い主に無事に返された。