長月に1日1茂島 3日目斎藤茂吉は医務室に所属をしていた。
当初から医務室にいたのは森鴎外で、後に内科医としてコナン・ドイルが加わり、茂吉も加わった。
「近いうちに島田清次郎を転生させたいだそうだ」
「希望系だな」
「先行転生の知らせが来たようだが、資料はある。転生させたいというが転生させるまで潜書だ」
「雨ごいで雨が降るのは雨が降るまで踊るからのようなものだな」
ドイルと鴎外の会話を聞きながら、その時の茂吉は渡された資料を読んでいた。
あれからもうじき、二年が経過しそうで、
「梨と食パンを貰ったんだ!」
『酢豚にしてやろう』
「食パンと酢豚か……酢豚?」
『なしすぶた』
医務室にて清次郎がスーパーの袋から食パンと梨を出す。梨はとても大きい。加賀しずくという清次郎の故郷である石川県の
梨であるようだ。とても大きい。
少女姿の『くま』が袋を受け取り中身をチェックしていた。
「私はおやつにしてほしいのだが」
『それならおやつに加工してやろう』
酢豚のパイナップルを梨にして、作ると美味しいということを茂吉はきいたことがあった。
本日の医務室は茂吉と清次郎だけである。ドイルは本館の手伝いに行っているし、鴎外は甘味を食べに商店街の方に
出かけていた。『くま』が出ていく。
「トルストイとランボーに食パンを貰い、ラヴクラフトから梨を貰ったんだ」
「仲良くやっているんだな」
「俺が当時読み、感銘を受けたトルストイやドストエフスキーにこうしてあるとは思わなかった。仲良くはやっているぞ」
レフ・トルストイとアルチュール・ランボーはパン屋にパン作りの修業に行っていることがある。
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトはおすそ分けに沢山の梨を貰ったらしいので貰ったのだそうだ。
清次郎の生前の年表は茂吉も目を通している。医務室組にはデーターが渡されるのだ。
「良かった」
「……『くま』もたまにそういうが俺だってやれているんだ」
不貞腐れたような声で言う。
清次郎が転生してくるということになり、恐らくはトラブルが起きる確率が大きいからと分館の管理者の黒い方が、
『くま』に清次郎のことを頼んでいたらしい。だからアレで構っているらしいのだが、
「そうだな。君はやれている」
図書館に馴染むようになった。友人たちも増えた。成長している。
「もっと褒め讃えろ!」
『梨と食パンで菓子を作ったぞ。食え』
声だけがして茂吉のテーブルの上に白いココット皿が置かれた。スプーンも置かれている。
中には食パンが敷き詰められていて、切られた梨に
白いソースがかかって焼かれている。
「これは」
『食パンを敷き詰めてきった梨を詰めて牛乳と生クリームとか混ぜたソースをかけて砂糖振りかけて焼いた』
「ふ……俺の神の舌にあうかどう……熱っ」
「気をつけるんだ。島田君」
スプーンですくい食べた清次郎が熱そうにしていたので茂吉が気遣う。
「お茶が欲しい」
「淹れよう」
これから二人でおやつタイムだ。こんな時間もよく過ごすようになっていたし、当たり前になっていた。