ありしまきょうだいのはろうぃんまえ里見弴も有島武郎もハロウィンの仮装をしていた。
着ているのは冒険者風の衣装だ。
帝国図書館ではハロウィンが行われようとしていた。
防具はお菓子である。
持ち歩いておかなければお菓子を請求された時に渡せずに、渡せなかったら悪戯をされるのだ。
「騎士みたいですね」
「確かに」
「本の中を旅したことを思い出すね」
島田清次郎が書いた本が侵蝕され、有島兄弟と折口信夫で潜書をしたことを思い出す。
ナイト、騎士、有島はあの中でも騎士のように振る舞っていて村人たちに感謝されていた。
弴は時折振り返る。
兄とこうやって仮装をしてハロウィンに出たりすることが出来ることは、さいわいだと。
「おー、お前たちは冒険者風の衣装か」
「岩野さんは……宇宙海賊の衣装だね」
岩野泡鳴も仮装をしていた。
「俺も冒険者風の衣装は持ってるけどな」
「……ハロウィン、興味深いです。いつの間にかキリスト……ケルトから離れて仮装だけになってるみたいなもんが」
「日本で言ったら……甘茶をみんなでかけよーぜになるみたいなもんか」
「そうならないといいよね」
「大丈夫だよ。弴、絶対にならないから」
甘茶をかけるというのは仏教だ。お釈迦様の誕生日である灌仏会、四月八日の花まつりで甘茶をお釈迦様の像にかけるのだ。
人間通しではかけない。
「ハロウィンとかいろんなイベントを武郎兄と一緒に過ごせてうれしいんだ。志賀兄や武者さんやみんなともそう!」
「騒げるときには騒いでおけよ」
「弴……」
「ええことです」
素直にさいわいの気持ちを口にすれば、有島が表情を緩め、岩野が励まし、折口が首肯した。
しあわせは、続く。