いたずらの方法「今年のハロウィンの俺は勇者の服装だ」
「似合っているよ。兄さん」
「棒読みだな弟よ」
島田清次郎は甲冑を着ていた。かつて、自身が書いたゲームブックに潜書をした時に作ってもらった衣裳だ。小川未明の方は魔女の服装をしている。
未明が清次郎を兄さんと呼ぶのは町に出たときこの二人はきょうだいのふりをすることがあるからだ。未明が清次郎の方に視線を向けている。
「言わないの?」
「トリックオアトリート」
「はい。お菓子」
未明がアルファベットチョコレートをひとつかみ渡す。
「斎藤にも仕掛けようと想ったが……奴への悪戯がうかばん」
「悪戯前提何だ」
「考えて置いているだけだ。うなぎのふりをした魚のすり身の鰻加工品で作ったうな重でも」
「それは悪戯を通り越して嫌がらせじゃ」
「島田君」
話していると噂の主である斎藤茂吉が来た。水干を着ている。
「……ゲームで言う僧侶だな」
「そうか。島田君は勇者だな」
「トリックオアトリート」
「ちゃんと持ってきている」
茂吉は清次郎に和菓子を渡した。ハロウィンのオレンジのかぼちゃを模したものでケースに入っている。
「……ふ、俺が悪戯をせずにすんだようだ」
「師匠たちもハロウィンを楽しんでいる」
「俺も楽しんでいるぞ」
「ならよかった」
「南吉たちと合流しよう」
茂吉と清次郎を見守ってから未明は他の童話組と合流することにした。