とーこくの誕生日十二月二十九日は北村透谷の誕生日だ。
「誕生日を祝ったら三十日、みんなで宿泊して年越しだね」
「今年……来年は旅行だな」
帝国図書館分館にて、田山花袋と透谷は話す。帝国図書館は今日から一月三日まで年末年始休暇に入る。この間、文豪たちは長めの宿泊が許可されやすいのだ。何かあったときには呼び戻されたりするし、図書館には一部の文豪が残らなければならないが正月を宿泊で過ごしたくない者もいるため、バランスが取れていた。年末年始休暇で図書館に残った文豪は優先的に長期休暇が取れるようになっている。
みんなで宿泊のメンバーは自然主義のメンバーや尾崎一門、幸田露伴や坪内逍遙、森鴎外もいる。年越し宿泊メンバーは増えるに増えたのだ。
「旅行も楽しみだけれども、誕生日も。――今日ぐらいはお姫様気分で居てもいいよね」
誕生日パーティの準備は他の文豪たちがやってくれる。透谷は祝われる側だ。
弾む心で透谷が微笑んだ。
「あのな。透谷」
「どうしたの。花袋君」
花袋が何かを決意したように透谷に話しかけた。
「――今日だけじゃなくても毎日お姫様気分でもいてもいいと想うし、俺にとってお前はお姫様なんだからな!!」
「花袋君……」
花袋が告げた言葉が透谷にとっては花束で。
「最高のプレゼントだよ」
「物も用意してるからな」
「言葉も嬉しいよ」
透谷は花袋の胸に飛び込んだ。花袋は転びそうになりながらも透谷を受け止める。
図書館に、花が咲いた。