ひとがら「……吉川さんが女の人を泣かせた?」
「そうらしいんだが」
司書室にて中里介山が作ってくれたカレーを特務司書の少女は食べていた。本日の助手であるフィッツジェラルドが報告をしてくれた。文豪たちに関しては基本放置ではあるが、何かあったら連絡をしろとは言っている。
介山のカレーは何日も野菜を煮込んだ野菜のルーを使ったカレーだ。志賀のカレーはスパイスメインであり胃がきついときはきついのだがこれはとてもやさしい味だ。
「誰か人助けでもして泣かせたのかな」
「アイツに関してはそっちになっちまうのは分かるぜ。司書」
「人柄だよね」
左手でスプーンを持ちながらカレーを食べていく。後で吉川英治に話を聞こうとは考えた。
「敦君と敦君のプレゼントを買いに商店街に行ったら道路をいきなり二歳児が飛び出し、我が助け子供を母親に渡したら母親が泣いたのだ」
「……さすが吉川さん」
「中島と中島にプレゼントを買うのを当然にやってるぜ」
「敦君と敦君にプレゼントを買うのは当たり前だ」
中島さんの誕生日が近かったんだよと特務司書の少女は気づく。彼女もプレゼントは用意していたが、中島敦は二重人格だ。まとめないで個別に買っている。
「吉川さんだから安心するんだよ」
「そうか。ならばよかった」
「人徳だぜ」
吉川は太陽のような存在であると特務司書の少女とフィッツジェラルドは改めて感じた。