サラダ記念日「この味がいいねと君が言ったから、七月六日はサラダ記念日っていい句だよな」
七月六日。帝国図書館の食堂はサラダデーとなっていた。サラダと言っても広義なのでサラダチキンも出る。
正岡子規は嬉々としてどんぶりいっぱいのサラダを食べていた。サラダは新鮮なレタスやオレンジ、ミニトマトが使われている。
「喜んでいるね。正岡」
「語感もいいし覚えやすいからな!」
「僕の分も食べそうなぐらいにサラダを食べて」
「いいだろう。夏目。美味いし」
正岡子規と夏目漱石は食堂で食事をしていた。正岡は朝から塩だれ豚丼を食べている。付け合わせの味噌汁も大盛りで葱と豆腐だ。
「ありがとうございます」
調理助手の青年が夏目の前にクレープを置いた。食事になるクレープだ。おやつのイメージが強いクレープだが作り方によっては食事にもなる。
食堂は正岡たちが転生してから現在三十代後半の料理長が主に頑張っていたが今年になって調理助手が入った。調理長が休みの本日、調理助手が仕切っている。
「君は好きに短歌や俳句を作る。最近は自由律俳句を好んでいるというが」
「面白いし、こういうのも俳句だろう。俺がいなくなってからも俳句も短歌も進歩しているからな」
「君が立て直しをした際は停滞していたからね」
「……正岡さんは道筋を作りましたからね」
「折口」
静かに入ってきたのは折口信夫だ。
調理助手にアレがいいですと夏目が食べている賄クレープを注文する。
正岡は俳句を今の形に持って行った者であるし、短歌をすすめたものだ。当時の短歌は停滞していた。
正岡たちの隣のテーブルの椅子に折口は座る。
「道を作ったらみんなが進んでくれた。ありがたいことだ」
「……そういうの、ありますよね……」
「お前も民俗学を進めた者だろう」
「センセに比べたら」
「肉サラダはないのだろうか」
折口が呟くと噂をしていたから来たのかは不明だが柳田國男がやってくる。肉サラダと話した。
「冷しゃぶサラダなら」
「それで」
「俺も食べたい」
「正岡」
「……皆さん、文学? の道筋を作って……」
「関わったらみんな、道を作るし歩くもんだ」
豚肉の冷たいしゃぶしゃぶのサラダを提案したら、柳田はそれでいいという。正岡もさらに食べたがり、夏目がとがめていた。
調理助手は文豪をあまり知らないようだがそれでも、名前を一度は聞いたことがあるというのが食堂にいる文豪たちだ。
正岡は明るく、なんて事のないように話す。
道は、出来る。
「高村君のようなことを言う」
「あの人、彫刻を作っとりました」
「創作活動に打ち込んでいたか。俺もフィールドワークに行かねば」
「好きにやれることはいいことだ!」
夏目が高村光太郎を思い出し、折口がたかむらが何をしていたかについて話した。
柳田は食べてからフィールドワークに行くようだ。
正岡は明るく話す。
道は出来て、これからも続く。