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    ハスミ

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    来年5月に乱寂新刊を出したいのでリハビリです。
    いつもの初期口調先生+謎空間にいます。

    20221115_乱寂リハビリ「昔、かなりおおきなクマのぬいぐるみを親戚からもらったことがあって、抱き枕代わりというわけではなかったんだけどしばらくそれといっしょに寝ていてね、私の身長が伸びるよりもかなりまえのはなしだから……そう、おおきさはこのくらいあったかな、」そういいながら、ならんでベッドに横たわっている寂雷が俺の身体を軽くぽんぽんとリズムを取るように叩いた。どういうつもりなのかわからない。ただ、綿の詰まったぬいぐるみと、にんげんさま同様につくられているこの身体を並列しているようにも受け取れて(俺の正体を知らないとしても)ひどく厭だった。生きているとはいえ、すべて、すべてがつくりものだ。――だから、すこし言葉の扱いに敏感になっている。この聡いおとこでも見抜けない現実があるということへの絶望と、そこまでにんげんに見えているという優越、そしてこの生への果てしない怒りにまみれて生きることをこの世に発生した瞬間から強いられている。そういった生き方しか選択出来ないのだし、そうでもしないと自壊してしまう。おんなどもが、いや、ひいては全人類が憎い。憎い、なんて単純なワードで表し尽くせないほどの激情を皮膚の下に隠しながら、「えーっ、僕がぬいぐるみくらい可愛いっていいたいの?」と、シーツの波を撫でつつ笑ってやる。愛玩動物という言葉に《愛玩》という単語が付けられているように、俺もそうした性質を持っている。媚び、に近似している声音や表情というのを浮かべるのは得意だ。数ヶ月前、俺が寝付きが悪いといったことから、まるでこどもにするかのように定期的に寝かしつけてくれるようになった寂雷は、俺の身体をそっと叩きながら「――きみはぬいぐるみなんかじゃないでしょう、」そうやって低い声を差し込むように言葉を吐く。ひやりとした。この身体に関する事実をしってるとでもいいそうな口調に、俺はすこしの恐怖をおぼえる。いや、これは恐怖だろうか、おまえとこうして添い寝をしているくらい俺たちは親密な仲なのだから、なにも怖がることはないのだろう。だが、綿が詰められて、ずっと口角を上げて笑っているぬいぐるみだったとしたらどんなに生きやすかったか。きっとおまえの今後は、俺がクローン体であるということを知らないまま中王区に利用されるのだろうし、俺はおまえについて前もって渡されていた資料に書かれていたデータ以外知ることなく別れるのだとおもっている。だから、ここはいわゆる交差点にちかいのかもしれない。ベッドの上で丸まっていた体勢から、おもいきって寂雷の顔を見ようと顔を向けると視線がかち合った。あ、こっちを見てる、とおもっていると、寂雷が一瞬、すうっと息を飲み込んでから一気に言葉を吐き出す。「確かにぬいぐるみは可愛かったけれど、きみのように楽しそうに笑ったりしゃべったり、まばたきをしたり――ましてや、おやすみのキスをねだったりなんてしないよ、キスなんて、私にそんなことをさせるのはきみだけだと知っているでしょう、乱数くん」そうして、俺たちは見つめ合った直後、どうしようもなく笑った。そんなことをしながらふたりしてじゃれあっていると、カーテンの隙間からひかりが射し込み、それはちょうど俺の右目を照らした。あまりに眩しかったのでウインクをするように右目をギュッと瞑り、左目だけで寂雷の方を見る。半分の視界、半分の世界、半分にして交換してしまいたい身体がここにある。左目のみで見た寂雷は、最近わずかに視力が落ちたせいでどうもぼやけている気がした。そうだ、ぼやけているのは視力がいけないからだ。そして涙があふれているのは、きっとなにかのまちがいで感情が混線してしまっているのかもしれない。利用し、または利用されることによって別れることが前もって決まっている出会いなのだから、こんなふうに特別なおもいでを作ることはそもそもありえない。あってはいけない。そんなことをかんがえているとカーテンがすこしそよいで、おおきく見開いていた左目の視界さえもひかりで潰してしまう。まばゆさと逆光でおまえのことがまったく見えなくなり、それはおまえの聖性さをあらわしているようで得体のしれない恐怖感を煽った。《聖性》なんて言葉を踏みにじる経歴から射すひかりで、いっそ俺の視界をすべて閉ざし灼き尽くしてくれればいい。そのうつくしい顔が、ひかりのなくなった視界に唯一浮かぶものであれ。そうして俺は、いや、僕は飴村乱数として寂雷を最初で最後の恋人にしようと、そう決意したんだよ。

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    ハスミ

    REHABILI2022/12/26
    乱寂のお題さんは晴天の定義にそぐう日、安全性が疑わしい遊具のある公園で考えなしに言ってしまったせりふの話をしてください。
    #さみしいなにかをかく #shindanmaker https://shindanmaker.com/595943
    診断メーカーさんの中にある『さみしいなにかをかく』で出たお題を使用させていただきました。こちらのお題、とても素敵なので時々お借りしています。
    2022/12/26_お題_乱寂SS 雲ひとつないとはいうけれど、冬の青空というものはどこまで広がっているのだろうか。いや、地球が丸いとか大気が覆っているとか、そんなつまらないことをかんがえたいんじゃない。俺の見ている青は、寂雷にとっての白かもしれないし、第三者からしたらあらゆる色がきたならしく混ざったヘドロ色かもしれない。じぶん以外の視点になんか一生かかってもなれないので、こんなことに思い巡らすのは無駄かもしれないけれど、意思/思考をもった一個体としてそのくらいはゆるされるべきだろう。
     シブヤ区ショウトウ方面におおきめの公園があると寂雷がSNSで知って、俺がここへ案内するまで三十分。きっかり、三十分だった。公園内にはシートを張られている砂場や、無害そうにスプリングでゆらゆらと揺れる動物の乗り物、チェーン部分を支柱にぐるぐると巻きつけられているブランコなどがあった。『危険!乗らないで!撤去予定日XX/XX』と張り紙をされているスプリング遊具をまじまじと見ると、それは犬とパンダと象と魚で、およそなんの特徴もなく作られてしまった水色の魚がなんとなくかわいそうになる。魚の遊具はそこそこ人気だったのか、あちこちの塗料が剥がれて部分的に黒くなってしまっていた。
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    ハスミ

    REHABILI来年5月に乱寂新刊を出したいのでリハビリです。
    いつもの初期口調先生+謎空間にいます。
    20221115_乱寂リハビリ「昔、かなりおおきなクマのぬいぐるみを親戚からもらったことがあって、抱き枕代わりというわけではなかったんだけどしばらくそれといっしょに寝ていてね、私の身長が伸びるよりもかなりまえのはなしだから……そう、おおきさはこのくらいあったかな、」そういいながら、ならんでベッドに横たわっている寂雷が俺の身体を軽くぽんぽんとリズムを取るように叩いた。どういうつもりなのかわからない。ただ、綿の詰まったぬいぐるみと、にんげんさま同様につくられているこの身体を並列しているようにも受け取れて(俺の正体を知らないとしても)ひどく厭だった。生きているとはいえ、すべて、すべてがつくりものだ。――だから、すこし言葉の扱いに敏感になっている。この聡いおとこでも見抜けない現実があるということへの絶望と、そこまでにんげんに見えているという優越、そしてこの生への果てしない怒りにまみれて生きることをこの世に発生した瞬間から強いられている。そういった生き方しか選択出来ないのだし、そうでもしないと自壊してしまう。おんなどもが、いや、ひいては全人類が憎い。憎い、なんて単純なワードで表し尽くせないほどの激情を皮膚の下に隠しながら、「えーっ、僕がぬいぐるみくらい可愛いっていいたいの?」と、シーツの波を撫でつつ笑ってやる。愛玩動物という言葉に《愛玩》という単語が付けられているように、俺もそうした性質を持っている。媚び、に近似している声音や表情というのを浮かべるのは得意だ。数ヶ月前、俺が寝付きが悪いといったことから、まるでこどもにするかのように定期的に寝かしつけてくれるようになった寂雷は、俺の身体をそっと叩きながら「――きみはぬいぐるみなんかじゃないでしょう、」そうやって低い声を差し込むように言葉を吐く。ひやりとした。この身体に関する事実をしってるとでもいいそうな口調に、俺はすこしの恐怖をおぼえる。いや、これは恐怖だろうか、おまえとこうして添い寝をしているくらい俺たちは親密な仲なのだから、なにも怖がることはないのだろう。だが、綿が詰められて、ずっと口角を上げて笑っているぬいぐるみだったとしたらどんなに生きやすかったか。きっとおまえの今後は、俺がクローン体であるということを知らないまま中王区に利用されるのだろうし、俺はおまえについて前もって渡されていた資料に書かれていたデータ以外知ることなく別れるのだとおもっている。だか
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