【アソ龍】新派 ──まったく煩わしい。
自慢気に吹聴したわけでも見せびらかしたわけでもないのに、一体どこから情報が漏れたのか。強いて言えば友人に一度話したことがあるくらいだが、伝えたのは「家に代々伝わる名刀である」ということくらいである。そして友人はべらべらと触れ回る性質ではない。
「演劇部の存続が掛かっているのだ!」
「下手な演技をするわけには……っ」
「頼む亜双義!」
長机ごと囲まれているこの状況に、亜双義はただ眉根を寄せていた。
講義が終わりしな近付いてきたのは、見知らぬ先輩一人、大して仲良くもない同級生二人の計三名であった。
聞けば彼らは演劇部員であるらしく、亜双義家の家宝──《狩魔》を貸して欲しいということであった。
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