「実は僕、宇宙人なんだ」
ハルは貘を真っ直ぐ見つめて言った。
ハルが突拍子もないことを言い出すのはいつもの事だが、今日はどうも様子が違う。
「…………え?」
突然何を言っているんだろう? と、困惑する。
「あぁー、ごめんね。やっぱり驚くよね」
「そりゃそうだよ! 何言ってるの!?」
「うん、そうだよね。でも本当なんだよ」
ハルは真剣な眼差しでそう言う。
確かにハルの瞳は透き通っていて綺麗だけれど、それは単なる目の色であって、宇宙的神秘性を感じさせるものではないし、そもそも人外の存在だったらもっと別の何かがあるはずだ。
「う~ん。じゃあ、証拠を見せようかな」
ハルはポケットから手鏡を取り出した。
そしてそれを覗き込むように促してくる。言われるままに鏡に顔を近づけると、そこには普段通りの自分の顔があった。少しつり目気味の大きな黒い瞳。鼻筋の通った鼻。白い肌の上に桜色の唇。ハルほど目を引く青年は多くはないが、やはり貘の知るハルには違いない。
「えっと…………これがどうかしたの?」
「ほら、僕の目をよく見てみて」
ハルが指さす方を見ると、いつの間にかハルの両目が真っ赤に染まっていた。その赤色はまるで血のような禍々しい印象を与えるものだった。
「わっ!」思わず驚いてしまった。
「びっくりさせちゃったかな?でも大丈夫だよ。すぐに元に戻るから」
「え…………戻るってどうやって?」
「ちょっと待ってね」
すると、ハルの目が元の黒色に戻った。
「今の見たでしょ? 僕はこんな風に目を赤くすることができるんだ。それにこの通り、体の形だって自由自在に変えることができる」
「いや、そんなことできるわけないし…………」
「じゃあ試してみようか?」
ハルは右手を上げると、まるで粘土のようにぐにゃりと腕の形を変えた。
「えぇっ!?」ハルの手がぐにょぐにょと伸びていく。それは蛇のような形にも見えた。
「本当に宇宙人だったのかよ。スゲーじゃん」貘は驚きながら言った。
「信じてくれた?」
「まぁ、信じるしかないけどさ。でもなんで今まで黙ってたんだよ」
「驚かせようと思って。あと、タイミングを見計らってた」
「それで、本当の目的は?」
「君と仲良くなりたかったから」
「それだけのためにわざわざこんな大袈裟なことをしたのか?」
「うん。ごめんね」「謝ることじゃないけどさ」
「ありがとう」
ハルは微笑んでそう言った。