いっぱい食べるライトさん3 フラペチーノ編浅羽悠真は猛烈に落ち込んでいた
早まった、というか盛大にしくじったと言わざるを得ない
仕事の情報提供者ライトの
ソースの付いた指先から目が離せなくなって 手が伸びたうえに口まで付けてしまった
(普通にドン引きだろ…セクハラじゃん…)
拳を守る為に硬くなった肌の感触だとか 今にも炎が吹き出しそうな熱さまで 焦げた砂糖の香りに紐付けられてしまった
(ていうか何で今職場で砂糖の匂いがしてるんだよ!?)
「マサマサも黒飴食べるー?ナギねえがくれたんだ」
「ありがとう 僕はいいから蒼角ちゃんいっぱい食べなよ」
(空気読んでよ月城さん!!!)
あれからスイーツ会のお誘いがぱたりと来ない時点で嫌われたと思っていいだろう
どこそこのあれが食べたいから付き合ってくれと誘ってくれるのはだいたい向こうからだ
(お詫びの席はこちらから設けるべきだよな)
『拝啓 早春の候いかがお過ごしでしょうか—』
ガチガチのビジネス文面で直接お詫びがしたい旨をしたためて送信した
——ん?返信早ッッッ
『おい なんださっきの』
『誰かと間違えてるのか』
『せっかくだからス◯バの新作フラペチーノ付き合え』
『話ならそこで聞く』
約束の日、いつもの格好で現れた無敗のチャンピオンは
謎の呪文を唱えてベンティサイズのカップに山盛りのクリームとシロップの詰まった何かをそれはそれは美味しそうに———
「なんか席が遠くないですか」
4人掛けの席でわざわざ正面じゃなくて対角線の椅子に座るとかやっぱり怒ってるじゃん
「……舐められないように距離を取れって うちの参謀(※ルーシー)が言ってた」
めちゃくちゃ警戒されてるじゃん!確かに舐めました、舐めましたともさ(物理的な意味で)
「先日は大変な失礼をいたしまして誠に申し訳なく—」
「どれの事を言ってるんだ?」
「…僕があなたの手を舐めた話です」
うわ。そんな一瞬で顔面赤くなる事ある?
グラサンの位置直しても意味ないから
「それは別に怒ってない 気にするな」
気にしようよ!!!成人男性が同性の手を舐めるって全然普通じゃないよ!?
「正面座っていいですか」
「好きにすればいい」
自分なら胸焼けを起こしそうな量の生クリームをうきうきと口に頬張っているライトを見ながら嫌な事に気付いてしまった
人が食べているのを見るのが好きなのは本当だ でも僕がずっと見ていたのは彼の口の奥の赤い舌だ
この人の象徴たるマフラーよりもずっとずっと紅い——
「俺に何か付いてるか?」
「かわいいお顔が付いてますね」
「どうしてこう俺の周りの奴らは大の男をかわいいかわいい言いたがるんだ」
「生クリームの口髭付けてりゃ言われて当然ですよ」
「!?」
「ほらナフキン 大丈夫ですよ今日は何もしませんから」
「怒ってないと言っただろう 触れたくない奴にいちいち会いに来たりしない」
「触っていいんですか」
「場所によるな」
次回、パ◯ラでハニトー編