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    すずめ

    かべうち絵日記練習帳
    リアクションでかまってくださったかた、ありがとうございます

    (すき → ほもとゆりと女体化とろりしょた)

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    すずめ

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    ちょっとしょんぼりしてらくがきなんもできなかったけどなんかアウトプットしないとそれはそれで妄想消化不良で自家中毒してくたばるから文字発散でしのいでる

    ◆たつまよで夏のはなし(未完)
    いつぞやのらくがきの、ひまわり畑の前で先輩呼んでるマヨチヤンのあれのつもり
    ひろくん自転車のれなくて特訓したとか
    たつまよラムネのますとか入れたいとこまで届いてないていたらく…
    無駄に長くなるのなおしてえ

    ##文

    いかにも夏らしい、高い空のひろがる午後だった。
    ひまわり畑のそば。
    麦藁帽の下の顔はぼんやりと、道の向こうに視線を向けて佇んでいる。
    髪色が濃いせいか、白い肌が殊更浮いて見えた。
    頬だけ、外気に当てられて常より赤い。
    咲いたような彩りの造形がやたら眼について、慌てて首を振る。
    胸の内、雑念を追いやるように戒めて、表情を作った。


    「お待たせしました」


    声をかければ、かの人がゆっくりと振り向く。
    大口の袖から覗く華奢な腕が持ち上がり、数度やわらかく手を振って、笑う。


    「暑いですねえ、巽さん」


    ええほんとうに。
    返事は、滞りなく相手に届いたようだ。
    手のひらには、買ったばかりのラムネの瓶が二つ。
    結露はとうにはじまって、瓶を握りこんだこぶしの先からほたほたと水滴が零れていく。
    足を踏み出せばその振動に、硝子のぶつかる硬質な音がからんと鳴った。



    ・夏の話



    結成から二度目の夏。
    ALKALOIDは四人そろって県を越え、とある海浜公園に出向いていた。
    来たる秋に向けて、参加型イベントの公募を盛り立ててほしいという依頼が入ったからだ。
    先行体験する姿を撮影し、感想を残し、公式SNSや広報誌で発信するのだという。
    屋外にいるだけで汗の流れるこの時期に秋を演じろとは中々難易度の高い要求であるが、広告とは備えるものだ。仕方ない。
    大々的に打ち出したいときに準備を始めるのでは生存戦略れないのである。


    さて。
    広い敷地に多くの木々や花畑を有したこの海浜公園の客層は、学生や社会人のいわゆるカップルよりも、子供連れの家族がメインとなっている。
    ゆえに、企画の内容もひたすら健全で健康的だ。
    やりきることを目標としたサイクリング大会や、草花を用いたミニブーケ作り。
    野鳥観察なども定期的に行っているらしい。
    秋以降、気温が下がった頃合いに花のジャム作りを催した年もあったという。
    パンフレットのバックナンバーを広げてあれやこれやと説明に来てくれた、先方の企画担当はにこにこといかにも平和そうな口ぶりで紹介してくれた。

    剣を振りかざすのではなく、守る盾として兵になる。

    そんな大義名分を掲げていこうと決めた自分たちALKALOIDにとってこの申し入れは、派手さこそないものの、少なくない面映ゆさを伴った。
    家族連れの多く行き交う、健全な行楽地からの依頼である。
    つまりは、小さな子供の前に出しても問題のないユニットという太鼓判を貰えたようなものだ。
    少なくとも、この企画担当者はALKALOIDをそう判じた。
    ならば応えない理由もなしと、二つ返事で引き受けて本日に至る。


    本日のミッションはおおまかにふたつ。
    早朝と言っていい、暑さがまだましな午前に撮影班を引き連れて、サイクリングロードを一周しするのがひとつ。
    間に自由時間をはさみつつ、陽の隠れた夕刻に、ちょっとした賑やかしライブをしてふたつめ。
    以上だ。
    ひとつめは先ほど終えたところである。
    年々気温が高まっているこの季節、時刻が二桁になるのを待たずにじりじりと地球を焼く日差しから、逃げるように屋内へ引っ込んだ。
    空調の効いた施設内の更衣室を借りて汗を拭き、着替える。



    (中略)

     * * *



    「わ、華やかだァ!」
    「たしかに、これだけの量、キャンセルだからと処分してしまうのはもったいないですね」

    土台と花とリボン。
    4人で使い切るにはいささか多量の材料を前に、藍良とマヨイがほころぶ。
    早速あれやこれやと好みの素材を見繕い、手元に寄せて検分していた。
    ぼんやりチームメイトの手際の良さを眺めながら、巽は途方に暮れる。
    というのも、こういう創作というのは昔からどうにも苦手で、センスのいい配置というのがとんとわからないのだ。
    眼の前に『こう作るんですよ』という見本と、そっくり同じ材料を並べられさえすれば、そこそこ同じように完成させられる自信はあるのだが、『さあ思うまま、感じるままにやってみましょう』と言われると途端に手が止まってしまう。

    なんとなし、藍良の様子を伺えば、お得意のスマホ検索とやらでいくつかのお手本を定め、うまいことミックスしてアレンジしているようだ。
    大したものである。
    素直に賛辞を贈れば、満更でもなさそうに笑う。

    「あとでさ、みんなの完成したやつ、写真に撮らせてねェ。SNSで紹介するから!」
    「ふふ、いつもありがとうございます」

    このようなファンへのマメな発信は、今時のアイドルをするために必要なのだろうと思うのだが、いかんせん。
    メンバーが揃っている場ではそのほとんどを最年少の彼が率先して済ませてしまうので、なんとなく役目を任せきりにしたまま今日まできてしまった。
    一年前よりは随分と覚えた気でいるのだけれど。
    とりあえず、地図機能と写真の撮りかたと、簡単な調べもの、くらいは。
    もっと覚えようよォ! とはよく言われるのだが、覚えなきゃダメと強いられたことはない。
    恐らく、藍良は藍良でSNS発信という役割は自分の領分だと思っている節がある。
    自信や肯定感にも繋がっているのだろうし、ならば、まあ、もう少し甘えてみようかな、なんて。
    けれど、役割分担は役割分担であり、自己研鑽とは別物だ。
    自分のためにも習得は必要であろうので、精進は続けねばなるまい。


    ちなみに、残る二人の出来はというと。
    一彩に関してはそもそも学校での図画工作という授業を受ける機会がなかったそうだ。

    「日常で使うものの作成や修理はしたことがあるけれど。槍とか、桶とか。
    こういった飾るための飾りというものには縁がなかったよ。
    祭事の際の巫女長の、頭飾りみたいなものかな?」

    槍ってなにさァ!
    メンバー内ではもはや慣れっこになったつっこみを披露しながら、巽同様途方にくれていた一彩へ藍良が寄り添う。

    「とりあえずさ、あんまり考えずに気になったもの選んでみなよ。すきな色とか、あるでしょ?
    その後、おれみたいにほら、こういった既存のものからちょっとずつアイディアをお借りしよう。
    まったく一緒にはしないように、自分でこうしたいって部分があったら積極的に変えるんだよ!」
    「フム、すきな色か」


    最終的に、彼は彼の髪のような緋色の花をいくつか見繕って、藍良に教えを乞うていた。

    「あかいの、すきなんだ?」
    「ん、なんとなく──いや、そうでもないか。理由のようなものはあるよ。
    昔、兄さんと一緒に秋の実の収穫をしたことがあってね。途中兄さんの髪みたいな、燃えるような赤の花を見つけて、食用でもないから無駄なことになるとわかっていたのに、そのときの僕はどうしてもそれを兄さんにあげたくなって、手折ったんだ。
    差し出したら、すごく喜んでくれたのを、ふと思い出したものだから」
    「……ふうん、そっかァ。うん、いいと思うよォ!」
    「ありがとう! はじめは藍良の眼の色の花を選ぼうと思ったんだけど、若葉色の花というのはあまりないようだから。
    藍良の色はリボンで代用することにしたんだ」
    「え、あ、うう。そ、そう、なんだ?」

    差し出される若葉色のリボンを、藍良がしゅるりと一彩の手から抜き去る。
    手のひらのそれをじっとり見つめる眉を寄せた顔は、知らぬ人が見れば仏頂面に見えるだろうが、知る人間が見れば照れているだけだ。
    ほら、どの結び方がいいのやってあげるよォ。なんてサンプルを画面に映しては、額と突き合わせてあれこれと話し合っている。
    ああ、子どもたちは今日も労りあって慈しみあって、善き哉、善き哉。
    光景に和んでいたので、当然その間、巽の手は止まっていた。


    「ふふ、お二人は今日も愛らしいですねぇ。このままいくらでも眺めていられそうですぅ」
    「まったく。助け合う姿というのは尊く素晴らしいものですな。浄化されそうです」
    「浄化されるのは私の専売特許ですのに」


    八の字の眉をもっと傾けて、苦笑しながら、マヨイが足音少なく隣に寄って来た。
    遅々として進んでいない手元はいかにも創作迷子の散らかりようで、一瞬で察したチームメイトは気づかわし気に巽を見やる。

    「巽さんは、苦手ですか? こういう、手元で創る作業、のようなものは」
    「そう、ですね。はい。見本や正解のないものは少し、苦手意識があります。
    正解がないのだからすきにすればいいというのは、わかってはいるのですが」
    「得手不得手は誰にでもあることかと。料理だって、適当でもおいしく作れるひとと、レシピがなければ進められないというひとはいらっしゃるでしょうから」
    「ああ、俺は後者よりですね。適宜適量といわれた瞬間に、難易度が上がってしまって」
    「うふふ、巽さんらしいといえば、らしいかと」

    くすくすと肩を震わせるマヨイに合わせて、編んだ髪や留めた紐が揺れる。
    去年と比べれば随分と距離を近くしてくれたものだ。
    笑う姿にこちらも笑んで、続きを引き取る。

    「マヨイさんは、もう終わられたのですかな?」
    「ああ、はい、一通りは。簡単にまとめただけですが。今はボンドの渇き待ちといったところでしょうか。
    一彩さんは藍良さんがお手伝いしていますから、その、私はこちらに」
    「さすが、マヨイさんは器用でいらっしゃる」
    「そんな、私なんぞへたのよこずきで……」
    「…………」
    「……ぅ、あ、ぃぇ、その。ええと……うぅ」
    「あ! まぁたタッツン先輩がにっこり攻撃でマヨさん黙らせてる!」

    呆れたような、けれどどこか苦笑交じりの顔で、はすむかいの藍良が声をあげた。
    彼が“まぁた”と評したように、ここ数ヶ月似たようなやりとりを繰り返したせいだろう。
    互いに既に慣れっこなやりとりだ。
    きょときょときょどきょどするマヨイを除いて、の話だけれど。

    「俺はただ、マヨイさんの素晴らしい部分をマヨイさんにこそしっかりとご理解いただきたいだけで、ええ。攻撃だなんてとてもとても」
    「じゃあ、マヨさん浄化スマイル?」
    「どちらにせよ、私へのダメージが決定的じゃありませんか……?」

    それは冬の頃合いからはじめられた、巽の自己満足がきっかけだった。
    マヨイが自分を卑下する言葉を使うたび、巽は洩らさず『いいえ』『とんでもない』『そんなことはありません』『どうかマヨイさんの良い部分を貶めないでください』と逐一拾い上げたのだ。
    出くわした卑下は、文字どおり一つも余さずに。
    それはマヨイのためというよりも、巽がもどかしがったがゆえの行動だった。
    マヨイを貶める言葉を、それがいくらマヨイ自身から発せられるものであったとしても、会話の流れでなあなあに濁して、そうですねなんて認めるようなことはしたくなかった。
    けれど、巽はやりすぎた。
    そして、マヨイに染みついたその癖も意識も、すぐに矯正できるほど浅いものではなかった、ので。

    『うっ、ぅ、ぅぇ……っ、ご、ごめんなさい、すみません、ゆるしてください。
    わた、わたし、私っ、わかっています。
    わかっているんです、たつみさんはすべて、私のことを思ってくださって、できるだけよりよい方向にと、考えて言ってくださっているって、わかっているのに』

    できないんです。
    どうしても私は、一歩考えを進ませる前に、できなかったときのために、失敗したときのために、自分に逃げ道を用意してしまうんです。
    ごめんなさい、ごめんなさい。
    何度も何度もあきらめず、自信をくれようと、してくださってるってわかるのに。
    じょうずにできなくてごめんなさい。
    やめられなくてすみません。
    マヨイはできそこないの悪い子です。
    こんなに、自分の癖を、それをとめられない口を、疎ましく思ったことはありません。
    ごめんなさい、でも、おねがいです、みすてないで。


    泣かせるはずではなかった。
    けれど言葉というものは、武器にしたつもりがなくたって、鋭くなくたって、少しずつ降り積もり、やがて圧を伴うものだと知ったので。

    音にするのは、どうしてものときだけ。
    自分の看過を越えるほどの自己批判を聞いてしまったときだけにしようと改めた。
    しかし、しかし、言うほど巽も大人にはなれなかった。
    最年長と言え、マヨイとはたかだか1歳の差であり、なんなら同じ年齢の期間は半年もある。

    気付いてほしい。
    彼が彼であるというそのことがどれだけ素晴らしくて得がたくて、巽にとって大事なことであるか、今は認められずとも、どうか、知って。

    そのようにこいねがう気持ちは棄てられなかった。
    だから、声には出さずに見つめることにしたのである。
    誰かの告解を受け止めるときの心構えをのせて、笑むことにした。
    そしてどうやら、マヨイにはこの方法のほうが向いていたらしい。
    マヨイが口をすべらせて、それを聞いた巽が頬をあげてとっくりと瞳を見つめる。
    気付いたマヨイはおろおろと視線を彷徨わせるものの、アドバイスという否定の言葉を突き付けられたときのように、半ばパニックを起こしかけながら謝罪をはじめる……といったことはしなくなった。
    手袋に包まれたすんなりと細い指をすくいあげて、きゅっとにぎりこめば。

    『あ、あ、あの。その、自信はないのですけど、えぇと、私なりに』

    がんばります、がんばりました、すきなものなので続けてみたいです、ちょっとうまくできたと思うんです。等々。

    否定を挟むのが癖であるのは仕方のないことだ。
    そこを否定してはいけなかった。
    マヨイの生きてきたこれまでの環境を、ひいては人生を押しつぶすような言動であった。
    追いつめる、傲慢な行いだった。猛省せねばなるまい。
    けれど、無駄でもなかった。
    傷を与えたかったわけではないと、マヨイはその優しさで以て受け止めてくれていた。
    撒かれた巽の執念のような執着はしっかりと根付いて、少しずつ、ほんとうに少しずつの歩みではあるが、マヨイの習慣をひとつ増やすことに成功したのだ。

    つまりは、自己否定の後の、よかったこと探し。

    こじつけだっていい。
    弁明めいていても構わない。
    とにかく、前向きなことを、都度ひとつ。
    それは巽が強制したものではない。
    いつぞや、後ろ向きなことを呼吸のように零して、それを聞き留めた巽がひとしずく、苦みを隠しきれぬ自覚のあるまま笑いかけた。
    泣かれてしまってから、マヨイが発した否定を追いかけぬよう努めて、何度目かもわからない、習慣のひとつにもなってきた頃合い。
    一瞬途切れた会話を、どこからひきとって続けようか思案した刹那、隣のマヨイが意を決したように続けたのだ。

    『で、でも! あの、私、前よりすこしだけ、ましに、なれた、と』

    おもうんです……。
    背をこごめて、消え入るように呟かれたそれ。
    耳は真っ赤だった。
    泣きそうにして、それでも、たぶんこの言葉は巽のためだった。
    マヨイがその日、どれだけの勇気を振り絞ってくれたのか、きっと巽はわからない。
    ただ、尊いことだと、それだけを理解した。
    それがあんまり嬉しくて、感極まって抱きしめてしまった。
    ぐぇ、とか聞こえたけれど、手加減できずぎゅうぎゅうマヨイの温度を堪能する。
    付き合いを始めて三か月をすぎたころの幸せな、春が咲きぞめる午後だった。


    以降、マヨイは及び腰ながらも毎度律義に、弱音の終わりには前向きを添えてくれるし、最後まで会話を聞き届けた巽は、静かにそれを肯定し、応援するというルーチンができあがることとなった。
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