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    【非最適世界線 】 https://www.pixiv.net/novel/series/11272925
    このシリーズのこの後のマイ&武。
    カプはドラ武のみだけど、この話はドラ武ではないような…マイ武でもないし…誰に向けた話なんだって感じだけど、ここが私のマイ&武のサビの部分だから何回でも色んなパターンで書く。

    #ドラ武
    drive-driver
    #マイ武(友情)
    maiBu
    ##非最適世界線

    if未来ドラ武の三ツ谷新ブランドとかマイキーとか◼️三ツ谷の新ブランド

    「知り合いに普通っぽいヤツいねぇかな?筋肉がちがちじゃなくて、ひょろっとしてる感じの…ちょい猫背みたいな…背もあんま高くなくて、普通の体型のヤツ」

    いつもの昔馴染みが集まる飲み会で三ツ谷が特殊な注文をつけて来るので、集まったメンバーは互いに顔を見合わせた。
    全員、脳筋な体育会系なので、悩みがあれば走ってくるとか食後に暇潰しに筋トレするとか言い出すタイプで鍛え抜かれた肉体には未だ衰えはない。もしくはかなり特殊な容貌だった。

    「ネット通販の新しいレーベル立ち上げるんだよ。安価くて、ユニクロよりちょいオシャレみたいな。昔のオレみたいなヤツが安く買える服。儲けは考えてないから完全に趣味の道楽だけどな。モデルっぽい体型じゃないヤツに着せて撮影したいんだけど…」

    三ツ谷は現在、若手としては異例に注目されるデザイナーとして独自ブランドを立ち上げて成功している。
    注目される切欠となったのは、世界的に売れっ子のトップモデル柴八戒だ。八戒は私服、私物のほとんどを三ツ谷の作ったもので固めていて、その姿はあらゆるメディアやパーティー会場で注目され広告塔となった。
    八戒的には自分だけのオートクチュールを材料費のみの破格の価格で作ってもらっているので、Win-Winの関係だと言っている。
    三ツ谷の新しいブランドは資金は持ち出しでも構わないくらいのつもりではいるが、かつての中学時代の部活仲間に安定した就職先を確保する意味もあった。
    三ツ谷の説明を受けて、一虎がじっと龍宮寺を見つめる。
    視線に気付いて、オレか?と首を傾げる男は、注文の普通の男とは程遠いルックスだ。当然、該当者は本人ではない。

    「お前ん家にいるじゃん。ひょろっとした普通のヤツ。猫背だし」
    「あ、武道か」

    一虎の言葉に場地も同意した。

    「例のドラケンの彼氏?」
    「ダメだ」
    「顔写さなくてもいいけど…」
    「ダメ。脱ぐだろ?」
    「脱がさねーわ!話聞いてたか?」
    「…着替えで脱ぐだろ?」

    三ツ谷のモデルは龍宮寺も手伝ったことがあるので、どんな状況になるかは知っている。
    数多くの服を次々に何度も着替えるので、着替えは衣装係がいる場で行われる。酷い時は、撮影場所で着替えていた。

    「…え?それもダメなのかよ?」

    しんと静まり返ったのに何故か、ざわ…という空気になる。
    男同士だけど…いや、付き合ってるのなら彼女みたいなものと思えば…?
    ざわざわする沈黙を色んな意味で空気を読まない一虎が破った。

    「ああ…歯形とかキスマとかついてんだろ?首についてんの、たまに見えてるし」
    「は?!見るなよ」
    「見たくねぇよ!首がてろてろのTシャツ着てっから見えんだよ!てか、見えるトコにつけんな!」

    言い争いを始める一虎と龍宮寺を千冬と三ツ谷が引き離し、三ツ谷は龍宮寺に人指し指を突き付けて宣言した。

    「撮影は二ケ月後だ!今ある跡は消えてるだろ!新しいのはつけんなよ!」

    その殺気立った勢いに押されて、龍宮寺は思わず頷いてしまった。

    家に帰って、武道に話す時に、龍宮寺はワンチャン嫌がって欲しいと思っていた。
    武道が嫌がるなら、何と言われても断固として断るつもりだ。

    「三ツ谷くんのだよね?オレで良いんなら手伝うよ!」

    しかし、龍宮寺の期待を他所に、武道は前向きだった。
    いつも面倒臭がりなのに、何故?と疑問に思うほど張り切っている。



    三ツ谷が仕事場として借りているマンションを訪れると、部屋には三ツ谷の他に八戒と万次郎がいた。

    「八戒!…あ、モデルの八戒さんですよね…えーと…ファンです」

    武道は誤魔化しきることに成功した。
    雑誌や街頭の巨大広告ポスター等でお馴染みの顔になっている八戒は顔の傷が目立つせいもあって顔を指されやすく、ファンに呼び捨てにされることは珍しいことではない。
    初対面ということになっている武道に対しても愛想の良い人懐こい笑顔で、ひらひらと手を振って見せた。

    「八戒は今日はカメラマンやってくれるから」

    世界的なトップモデルの盛大な無駄遣いである。
    三ツ谷は万次郎と武道を手際よく着替えさせながら撮影の概要を説明する。

    「基本、友達の双子コーデっぽく。でも、カップルっぽくも見える感じに撮りたいんだけど。今回の服は全部ユニセックスだから、どっちが女子かわからない感じに撮るつもり。武道の方がちょい背が高いから、一応、彼女は武道って設定しようかな」
    「え?女の子の振りするんすか?」
    「いや、男にしか見えないユニセックスな女子って感じで。別に男同士に見えてもいいし、誰が着ても良いってコンセプトだから」

    形が個性的なダボッとしたパーカーとスウェット生地のハーフパンツ、ロングワイドパンツ、裾と襟と袖のカッティングが面白い厚手の生地のTシャツをそれぞれ白と黒のカラー展開で着回して撮影する。
    真っ白同士と真っ黒同士も並んで撮影した。
    カップルの設定と聞いて、万次郎に嫌われている自覚のある武道は気まずく感じていたが、仲良くいちゃつく必要はなく全く触れ合わない距離で立たされて、これでカップルに見えるんだろうかと不思議に思う。
    緊張して仁王立ちだが、ポーズの指定もほとんどない。
    横を向いてとか、袖を見せてとか言われるだけだ。
    そもそも服が主役だし、顔は出ないと聞いているし、心配することもないか…と武道は次第にリラックスしてきた。
    三ツ谷と八戒の気の置けない漫才のような会話を聞いているだけでも懐かしく楽しい。
    二人が気を使って龍宮寺の昔の話をしてくれるのも興味深かった。
    武道以外の3人も会うのは久しぶりらしく、互いの近況報告や共通の友人の話題が出るのも、物凄く興味津々な武道だった。
    万次郎はやはり不機嫌で言葉が少ない。
    それは気になるが、良く知らない人間に対しての万次郎は、獣のように無口なことも珍しくないのを武道は知っていた。
    基本的に自分が嫌なことは絶対にしない人間なので、おとなしく三ツ谷の言葉に従っているのは嫌がってはいないからなんだろう。
    撮影は3時間ほどで終わった。

    「これ着心地良いね」
    「そのまま着てっても良いぞ。武道も良かったら着てってくれよ」

    3時間でぐったり疲れた武道は着替えるのも面倒臭くて、そのまま帰ることにした。
    撮影用に軽くメイクされていて髪も複雑に編み込みされピンでとめられているし、モノトーンとは言えオシャレなカッティングの入った服は人目を引くデザインだったが、ずっと着ていたせいで感覚が麻痺していた。
    三ツ谷と八戒の方が色もデザインも派手な服を着ていたせいもある。
    武道が白、万次郎が黒のセットアップを着て帰ることになった。



    駅までの帰り道が一緒でも先を歩く万次郎は振り返らない。
    真っ黒な上下を着た万次郎の背中を追いかけて歩くのは、不思議な懐かしさがあった。
    かつて、何度か追いかけた背中だ。
    このままずっと、どこまでも背中を追いかけて歩いて行きたいような気持ちになる。
    あの中学時代の帰り道みたいに。
    実際は武道は精神的には中学生ではなかったのだが。
    武道が一方的にノスタルジーを感じてエモい気分になっている間、前を歩く万次郎の気持ちは複雑だった。
    気に食わない。
    イライラする。
    今まで、龍宮寺が万次郎よりも優先する人間はいなかった。
    中学生の頃に妹のエマと龍宮寺が良い感じだった頃でも、龍宮寺はエマとの約束よりも万次郎の誘いを優先させてくれたものだ。
    それを良いことに我儘を言いまくって、そのせいで二人の仲が進展しなかったんじゃないかと、そこはさすがに反省している。
    だから、万次郎としては、まだエマと龍宮寺が恋人になる可能性をあきらめていなかった。
    そこに急に現れたのが後ろを着いてくる謎の男である。
    男なのである。
    しかも、普通の男だった。
    ものすごい美形とか、カッコイイとか、可愛いとかではない。
    色んな意味で理解できない。
    万次郎は格闘技の人気選手なので、ゲイの抱きたい抱かれたいランキングにも常連として入っている。
    正直、身の毛がよだつと思っていた。
    龍宮寺が、男が好きなんじゃないと即答してくれたのは助かった。
    そうでなかったら、今後の付き合いを考え直すだけじゃなく、過去の思い出まで消し去りたくなっただろう。
    YouTubeの公式動画にも、気持ち悪いコメントはつく。
    皆殺しにしたいと思っている。
    万次郎が知る同性愛者は、そんな存在しかいなかった。
    そもそも、理解できないのは同性愛に限らない。
    万次郎は恋愛というものをしたことがないのだ。

    「あの二人、お揃い着てるよ。双子コーデってやつ?かわいー。声かけるか?」
    「いや、あれは普通にカップルだろ」
    「マジか?どっちが男だよ?」
    「金髪の方は女の子でしょ」

    すれ違った男の声が聞こえて、万次郎の目が一瞬で黒く光を失った。
    頭の中が真っ黒に染め抜かれる。
    空洞になったみたいに黒く塗り潰されて身体が動いた。

    はっと気が付くと、万次郎に蹴り飛ばされた武道がぶっ飛んで地面に転がっていた。
    突然の暴力に驚いた男達が、武道に駆け寄って声を掛ける。

    「君、大丈夫?!」
    「警察呼べ!」

    スマホを取り出した青年の足を武道が掴む。

    「だいじょーぶですから…逃げて…走って!!!」

    鬼気迫る武道の声に怒鳴られて、周囲の人達は慌てて駆け出した。
    蜘蛛の子を散らすように人がいなくなる。
    蹴られた胸を押さえて武道は立ち上げると、呆然と見ている万次郎の手首を握って駅の方向に走り出した。

    「マイキーくん走って!警察が来るかも知れないから!!」

    言われて万次郎も本気で走り始めた。
    走りながら先ほど起こったことを考える。
    ほとんど無意識に身体が動いて得意の蹴りで男を殺そうとした。
    比喩的表現ではなく、本気で殺すつもりで蹴り上げた。
    その起動の先に武道がいて蹴りが当たって吹っ飛んだ。
    たまたまいたんじゃない。
    そこに急に現れたのだ。
    まるで万次郎の蹴りが来るのを知っていたみたいに。
    知っていたんだとしたら無茶だし、そもそも反応が速すぎる。
    万次郎が蹴る前に動いていなかったら間に合う筈がない。
    タイミングがずれたせいで、蹴りの威力は軽減していたはずだが、それでも身体が吹っ飛ぶほどの強さがあったのだ。
    立って走っているのが驚きだった。
    駅の手前で武道は失速し、しゃがみ込んだ。

    「大丈夫かよ?」
    「…喧嘩…しちゃ、ダメ、でしょ…映像とか…取られたら、どうするんですか…君に期待してる人達がたくさんいるのに、全部ダメになっちゃうんですよ……自分を大事にしてください…」

    そう言う武道自身は白い服が土で汚れてボロボロだった。

    「それ、お前が言う?」
    「…このくらいで…死なないから…大丈夫です…」

    瞳孔が開いてキマリまくった目をしている。
    試合中ならともかく、日常の中で、こんな目をする人間には滅多に会わない。
    しかも、武道は興奮していない。
    あくまでも静かだった。
    死なないから大丈夫…という理屈は、さすがの万次郎でも初めて聞く修羅の言葉だ。

    「一般人に暴力ふるったらダメですよ…これからも、何かあったら、オレを呼んでくださいね。LINEがあるし!自分一人で何とかしようとしないで!いつでも助けに来ますから!」

    必死の形相で言われて、万次郎は不審に思った。

    「…何で、そこまで…?」
    「だって、マイキー君は、オレの大事な…!」

    言い掛けて、武道も自分がおかしなことを言おうとしていることに、ようやく気付く。
    大事な友達、ではない。
    知り合いとすら言えないのだ。
    武道が一方的に大事な友達だと思っているが、万次郎にとっては気持ちが悪いだけだろう。

    「…大事な…えーと…大事な……あ!ドラケン君の大事な人ですから!」
    「はあ?!…お前、友達の友達は友達とか言うタイプ?」

    さすがに、そこまでではない。
    全く知らない龍宮寺の友達まで、自分の友達だとは思えないだろう。
    武道がどう答えようか考えていると、万次郎は呆れたように重ねて問いかけて来た。

    「あのグループLINEのメンバー、みんな友達とか言う気かよ?」

    それを問われると、ろくに考えずに大きく頷いてしまう。
    武道にとっては、ほとんどが一方的に知っている名前ばかりだった。

    「それは、そうですよ」
    「……マジで言ってる?皆のために、体張って助けんの?」
    「当たり前じゃないですか!」

    何の迷いもない様子で答えられて、ははっと軽い笑い声が万次郎の口から溢れた。
    馬鹿馬鹿しいと思うのに、武道の真剣な眼差しも気迫のこもった勢いも、全く冗談を言っているようにも適当なことを言っているようにも見えない。
    空手の試合で対峙する相手のように、覚悟が決まった目をしている。
    日常の中で、こんな風にガンギマリした目をしている人間はいない。
    中学時代にヤンチャして喧嘩していた時以来だった。
    万次郎のことを利用しようとする人間は昔から多い。
    今も沢山いる。
    そんな中で、自分を利用しろと言ってくれるのは昔の仲間だけだった。
    この男はこんなにひ弱なのに、人類最強と言われている万次郎を身を呈して助ける気なのだ。

    「お前、本当に大人かよ?ガキみてえ!」

    そう言われてしまうと武道は恥ずかしくなって顔を伏せた。
    確かに、子供のようなことを言っている気がする。
    人より長く繰り返しの時間を過ごしたせいで、同世代の人間より長い時間を生きているはずなのに、成長がないのは恥ずかしい。
    そもそもが中学生の頃の彼らとだって、同レベルどころか、もっとずっと子供だったように思う。
    俯いてしまった武道の旋毛を万次郎はじっと見つめた。

    こいつ、なんて名前だったっけ?
    確か…武道だ。
    武道(ぶどう)と書いて、たけみち。
    そんな強そうな名前は似合わないと思ったのを覚えている。
    もっと軽やかで楽しい響きの方が似合う。
    たけ…み…ち…タケミっちだ!

    「…タケミっち!今日からお前、俺のダチな!」

    決めつけるように宣言する。
    今までは龍宮寺の恋人というだけの存在だった武道が、今この瞬間から万次郎の大事な友達になった。
    自分のものだと認知した。
    だから、名前をつけた。

    「…え……あ…はい!…オレは…オレは、タケミっちです。マイキーくんのダチの、タケミっち…ですよ…」

    武道は顔を上げて大きな目を見開いて万次郎を見つめる。
    青い瞳がきらきらと輝き出して、潤んで、光が溢れるように涙がぼたぼたと零れ落ちていく。

    「…は?なんで泣くんだよ!?」
    「…嬉しくて…タケミっちって、良い名前ですよね…オレ、マイキー君にそう呼んでもらえるの…すげぇ…すげー嬉しいです…っ!」



    めちゃくちゃ泣いた顔で帰ってきた武道を見て、龍宮寺は剃り上げた額に青筋を浮かべた。

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