離したくはない 強情な赤い瞳が、じっとこちらを見上げている。涙を堪えるように潤んだ目を見開いて、唇をへの字に曲げて。頑固な所は昔とちっとも変わらない。百年前のあの時、並の隊士なら震え上がる様な柱の面々を前にして、君は傷だらけの体で必死に妹を庇っていた。新人隊士でありながら、風柱へ捨て身の頭突きを一発喰らわせたあの胆力には全く恐れ入ったものだ。あの頃と変わらぬ強い意志で、君は俺の心を掻き乱す。
「君は俺をどうしたいんだ」
燃え盛る炎のような瞳は生半な覚悟を許さぬ迫力だが、見上げる青年の瞳は微塵も揺るがず。むしろ一歩も譲るまいと、意志の強い眉尻がきりりと上がる。
「煉獄さんには、幸せになってもらいたいんです。ですから」
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