檸檬⑧ ⅷ. その時
月日は流れ、その時は突然やってきた。
「無惨様ッ!!! 俺、ついにやったよッ!!!!」
炭治郎が〝太陽を克服〟したのだ。
けたたましい叫び声は城中に響き渡り、鳴女を解して上弦の全員がその場に集結した。別に呼び出せと命じたわけではないのだが、鳴女の心境を覗くに(衝撃のあまり奇行に走ってしまった……どうしよう……)だそうだ。今回ばかりは仕方ないので免除してやる。
(私も甘くなったものだな……)
とか考えている無惨もまた、平常心を保とうと必死であった。飛び込んできた炭治郎を力強く抱き締めたままピクリとも動かず硬直しているのが、そのいい証拠である。
「……む、むざんさま……抱き締めてくれるのは嬉しいんだけど、ちょっと……苦しい、かな」
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