手配書のない海獣ハートの海賊団は、戦力を船長のトラファルガー・ローに頼りきっている。
これはこの海賊団を知る者たちの中での共通認識であった。
それなのに、なんだ、この状況は
突然船底には穴があき、海水がどんどん流れ込んできた。
真っ先に甲板に飛び出した者たちは、何処からか飛んできた斬撃に首と胴体を別れさせ悲鳴をあげ続けている。
先程恐怖に満ちた叫び声をあげて水に引き摺り込まれていった仲間は、たった今物言わぬ屍となって静かに海面に浮かび上がってきた。
「どうして俺たちの手配書が出てないと思う?」
「被害の報告するやつが居ないからさ」
ペンギン帽の男が、シャチを模した帽子の男が、海のなかから俺の足を掴んで怪しく笑った。
自分が誰にやられるか判らず、海中で声を上げることすらできないまま、皆昏い海へと引き摺り込まれていく。
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