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    pyo_st

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    POIPOI 16

    pyo_st

    DOODLE傀暮
    そんなに絡みはない。
    ※シャレムのプロファイルの内容含む
    ※一部洪水の描写があります。苦手な方は読まないでね。
    細い歌で繋がっている ロドスに入職してから、数ヶ月が経った。段々とこの陸上艦の作りも頭に入り、道に迷うことも無くなった。オペレーターに与えられる宿舎のベッドは簡素な作りだが、柔らかくて暖かい。あの古城での日々も荒野での野宿も全ては夢だったのだと思いたい。だが、あの頭がぼんやりと霞がかる甘ったるいキャンドルの香りが今でも鮮明に思い出され、あれは現実だと伝えてくる。
     ロドスでの夜は静かだった。古城にいた頃は考えられないほどだ。誰かの啜り泣く声、唐突な笑い声、永遠に続く独り言、鼻歌、役に没頭し続ける者、紙から机、机から壁へとひたすら何かを書き続ける者———常に何かしら聞こえていた。だから、この静かな夜だけはなかなか慣れなかった。静けさに耳を澄ませば、その直後には自分を卑怯だと罵り非難する亡霊たちの声、自分を舞台へ引き戻そうとする劇団の手のものの声が聞こえてくるのだ。幻聴だとわかっている。だが一度耳を貸せばもう止めることはできなかった。何も聞こえないこと。それが一番の恐怖だった。
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