空閑汐♂デイリー【Memories】14「なぁ、ヒロ……じゃない、な」
テキストから顔を上げながら溢された汐見の声に、フォスターは呆れたように息を吐く。航宙士学院の五年生として軌道ステーションにある国際航空宇宙学院のサテライトキャンパスで勉学に励むフォスターは、自習室で隣に座る汐見へ掛ける言葉に迷っていた。
「なぁ汐見」
フォスターの声に視線だけを向ける汐見の瞳は冷め切っていて、その事実に苦々しい気分になる。数ヶ月前までは、その瞳には自信だとか熱だとかそういった感情があった筈なのに。視線だけでフォスターの呼びかけに反応する汐見に、少しだけ逡巡するように言葉を探しながらも空気を震わせていく。
「もう、三ヶ月経つんだ。気晴らしでもした方が、いいんじゃないだろうか」
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