泡沫「いつもありがと」
言葉と共にラッピングされた箱を渡された。
「俺からも!おめでとうございます!」
「いつも世話んなってる、だから」
「気持ちばかりですけど……」
「ずっと元気でいてねェ〜ボス」
「ほらたもちゃんも」
「ちゃあ」
次から次へと包みやら袋やらを腕に積んでいく。色とりどりに飾り付けられたそれらを落ちないよう丁寧に抱きかかえた。
「こんな素敵な仲間に囲まれて、アンタ幸せ者ね」
ふふ、と微笑みかけられ照れくさくなる。
「ブラック自身もだけど、この子たちのこともあるから、これからも――」
「やあ、サンシャインくん」
声に振り向く。
「あ。今はユーニッドくんか」
華やかな濃い香が鼻をくすぐる。
いつの間にか腕に重みはなく、虚空を抱えていた。
「誕生日なんだってね、おめでとう」
目の前に佇む白手袋が指をスナップする。
手品のように一輪の花が現れ出た。
「いつもありがとう」
差し出されたままに受け取る。
たおやかに花弁を広げ、たった一輪でも存在を主張していた。
「いつも、最初に立ちはだかる敵として対峙してくれて。たくさんハックされてくれて。たくさん丸め込まれてくれて。マインドハックとはなんたるかを教えてくれて」
「――あぁそれと、壊し方についても」
「君のおかげで今のわたしがある。出会ったのが君でよかったよ」
見覚えのある黄色の花が白手袋に握られていた。その花弁を、ぎゅ、と握りしめ、
「これからもよろしくね」
開かれた掌から、はらはらとかけらを落とした。
「――ああ。ありがとう、センセイ!」
俺のことを治してくれたセンセイに祝ってもらえるだなんて。
なんて、幸せ者なんだろう!