神隠しのこぼれ話。供養。鶴丸視点
帰れば傷は癒える。だが負った傷の感覚や痛みは記憶に残る。
ぐるぐる、ぐるぐるぐるぐる、その繰り返しだ。
じゃり……じゃり……、ずしゃっ。
べしゃりと前のめりに転がった俺の耳に靴音が聞こえてくる。
「おい、大丈夫か?」
右手だけをゆらりと持ち上げ指差す。
「……俺は君が嫌いだ」
口を動かせば唇に玉砂利の感触、口の中に土の香りがして、舌にまとわりつく砂利のせいで口の中は土の風味となり舌に貼りついた。
顔や手のひらに擦りむいた感覚はあるが痛みは感じない。
「俺は君が嫌いだ」
右手だけを持ち上げて指を指す。嫌いだ。苛立つ。成り代わりたい。
「俺、あんたに何かした覚え無えけど」
「ああ、何も無いさ。何も無いから苛立つんだ」
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