送り狼暗い暗い夜の中。一人の男が山道を歩いていた。
その男の見目は金の髪を持ち、琥珀に輝く瞳をもっており、大層美しかった。しかし、それ以上にその男の心は美しかった。
その男の名は、司と言った。
司が何故、こんな光のない山道を歩いているかというとそれは体の弱い妹の為であった。
彼の妹は都心から離れた田舎の病院に入院しており、彼はそのお見舞いの帰りだったのだ。
妹を大層愛していた彼は時間ギリギリまで妹の元にいた。そのせいで、彼はこの山道を歩いているのだ。
ざわざわ、と草木が騒つく音がする。
その音はやけにうるさい。
まるで誰かが騒いでいるかのような煩さ。
しかし、司は全く何も気にしていないかのように歩き続けていた。
と、突然彼は足を止めた。
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