じょうずな へびつかいプロフェッサー事件の真相が明るみになった日から数年が経ち
亜双義は帰国を決めた。
まだ学ぶことは尽きないが、日本での法の変化に置いて行かれ
ることを危惧して一度戻るのだと言う。
ここで得たものを日本へ伝え後進を見届けた後には必ず戻る、
だからいつか戻るその日まで、立派な検事でいるように。
そう言い残し、別れ際に痛いほどの力で握手をして彼は
英国を去った。
翌朝。
まどろみの中、バンジークスは顔にくすぐったさを感じた。
毎朝のように起こしに来ていた弟子はもういない。
いたとしてもこんな起こし方はしないだろう。
ましてや使用人な訳もない。
恐る恐る目を開けると、とびこんできたのは細く長い赤い紐。
その向こうに白く光る鱗と、金色の目玉がふたつ。
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