アダバナ「明神様にお参りしたら、これを飲まないと」
「むしろこれが目当てなんだろう」
「ちゃんとお参りはしているんだから、いいじゃないか」
ここは神田明神の参道沿いにある甘酒屋。
店内は参拝客でにぎわっており、成歩堂龍ノ介と亜双義一真は
ぎりぎり二人掛けられる椅子に詰まるように座っていた。
優しい味でありながら、飲みごたえも感じさせる甘酒は
看板に掲げるだけの品である。
「このお店の由来、知ってる?」
「いや、知らん。そもそも初めてきた」
「前来た時に常連っぽいおじいさんから聞いたんだけど……
仇討のため、なんだって」
龍ノ介が口に残っていた甘酒を飲み込みながら亜双義を見ると、
一瞬目を見ひらいた後、いつもの不遜な笑顔に戻った。
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