猫の日の沢深小説 その日はなんだか体育館が騒がしかった。朝練の開始三十分前に到着した入り口で両足を揃え体育館中に響き渡るような声で挨拶しながら体育館に向かって一礼をしてから中に入ると、既に先に来ていた一年生たちが体育館の複数ある扉の内、体育館裏の林に面している扉の一つに集まっていた。皆一様にしゃがみ込み、何かを全員で見ているようだった。
「どした?」
沢北はそこへ近付き、彼らの後ろから声を掛けた。すると振り返った一年生たちが一斉に弾かれたように立ち上がり勢いよく頭を下げる。
「おはようございます!」
「あ…」
頭を下げたまま、一人が今しがた見ていた体育館の外へ首を捻って残念そうな声を漏らすと他の一年生も同様に外を再び振り返った。
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