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    kira2starlb1

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    kira2starlb1

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    たなばた!

    サン穹ワンドロ 七夕こんな言い伝えがあるらしい。
    年に一度、引き裂かれた恋仲の男女が会うことを許される日があると。
    天に星の橋をかけ逢瀬を許される…一体どんな罪を二人が犯したと言うのだろうか。少し厳しすぎるのではないだろうか?と俺は思う。
    あぁ、美しの君よ。もし君と引き裂かれる時間が来るとしたら…それはなんで悲しいことだろう…と視線の先のゴミ箱に頭の中で話しかけた。

    「あぁ、その話今日でしたっけ。僕はその話仕事をサボった罰だなんて聞いてましたけど…それなら仕方ないんじゃあないです?」

    特になんの感慨もない電柱にもたれかかってゴミ箱への愛を噛み締めながら黄昏ていると、男は現れた。
    視線の先にいた愛おしい丸々としたフォルムのゴミ箱を眺める甘美な時間は…今終わりを告げたようだ。

    「おい、勝手に思考を読むのやめろよ。お前に話しかけてなかっただろ今」

    その物語に伴った飾り付けがあったり、その飾りに願いをかけたりするらしい。
    願掛け、というやつなのだろう。

    「どうします?もしお兄さんと僕が年に一度…許された時にしか会えなくなったとしたら」

    「せいせいするかな」

    仕事の終わりなんですよ、と近づいてきた男の顔面にパンチを喰らわす一言を放つ。
    それでも彼はめげない、華麗にかわしそれでいてこちらに近づいてくる。

    「もう!素直じゃないんですから」

    年中薄暗いこの土地に、星空の話は似合わない。
    そもそもここに住んでいる人たちがこの手の話を知っているのかすらわからない…これは学の無さを嘲る侮蔑などではなく、隔たれた青空に、星々の物語は馴染みがないのではないだろうかという話だ。

    「そんな話いつ聞いたか忘れちゃいましたねぇ、随分と昔なようも気もしますが」

    「お前は俺に聞いたけど、お前はどうなんだ?俺と会えなくなったら悲しいか?」

    「え?…それは…勿論。寂しいですよ」

    あ、今目が泳いだ。
    何もかもを見通すような緑の瞳が一瞬揺れたのを俺は見逃さない。

    「何故?」

    近づいて、その憎たらしい笑顔の仮面に手をかけて、剥ぎ取る。

    「な、何故ってそりゃあ…大事な大事な、お得意様ですし」

    仮面を被り続けて、もはや体の一部になってしまっているのだろう、きっと暴く時には皮膚を引き裂かれるかのような痛みが伴うはずだ。

    「そっか」

    「それ以外に何があるって言うんです?」

    そして、再び仮面を被り直したサンポは俺に問う。
    どうして?なぜ?貴方は僕に何を求めているの?と言いたげな表情で。

    「俺、お前が…俺のことが好きで、だから会えなくなったら寂しくなるって事だと思ってた」

    「えっ」

    「そうだったらいいなって思ったけれど、違うんならいいや」

    これは完全に相手にとって〝想像できない〟言葉だったようだ。
    まるで処理落ちしたかのように次の言葉を探す彼に、正直ざまぁみろと思う。
    普段アレだけ俺のことを弄んでおいて、素直な言葉にはこれほどまでに弱い。
    否、自分が好かれるとは思わないような挙動ばかり繰り返しているのだから、彼の頭の中では俺はサンポを疎ましく思っている…という計算式が成り立っていたのだろう。

    「ちょ、ちょっと待ってくださいお兄さん貴方どこまで知って」

    「俺もう行くよ、次のゴミ箱が待ってる」

    「ま、待ってるってゴミ箱が待つわけないじゃないですか!ちょっと話し合いましょうよ」

    「ゴミ箱との約束があるんだ」

    慌てて俺の袖を掴んで引き止める彼の弱々しさと言ったら!
    それだけの筋肉があって、ガタイがあって、どうして俺の腕を引っ張らない?
    どうして無理やり止めようとしない?
    仮面を剥いだその下は臆病者の孤独な男しかいないのだ、こんな俺一人この場所に留める勇気すらない、軟弱者!

    「ひどい…じゃないですか」

    「酷いのはどっちだ?」

    散々俺の心を弄んでおいて、今更引き返すなんて言わせない。
    一度ぐらい心を引っ掻いても、俺にはお釣りが来るほどだろう。

    「穹さん」

    「じゃあ、俺のこと好きってこと?」

    「い…える、訳ないじゃないですか。まだ…」

    「…こんなはずじゃなかった、って?お前の頭の中では、こんなふうに話が進むようにはできてなかった?」

    夢の中の彼はどこまでも俺に自分自身を晒していた。
    そしてヒントをくれていた。
    そして…俺を通して、誰か違う人を見ていた。
    その瞳が俺に向けばいいのにと、思った。

    「なっ…!」

    「お前の中の俺は、お前を追い詰めるほど大きな存在だったってことだろ?ならそれでいいよ、今は。じゃあね」

    「待ってくださいよ、穹さん!」

    「…俺は人が好きって事、はいかいいえの0か1かしかないと思ってるんだけど、お前は違うの?」

    さぁ揺らげ。
    その上っ面ばかり取り繕う奇怪な仮面を投げ捨てろ。
    そして俺に全てを投げ出して、好きだと言え。

    「…っ、大人しくしていればごちゃごちゃと…いい加減にしてくださいよ!僕には僕のペースってものがあるんです!」

    「へー」

    「うわっ興味なさそう!ちょっと、お兄さんが引いた引き金じゃないですか!もう少し興味持ってくださいよ、僕に!」

    肩を掴まれ、ぐわんぐわんと揺さぶられる。
    焦ってる時のサンポは面白い。

    「お前俺のこと好きなんじゃないの?」

    「何でそう思うんです!?」

    「…なんとなく、好きかなって」

    「なんとなくで本心突かれて慌ててたんですか僕!?嘘でしょう!」

    ほらな、やっぱりあってただろ。
    へにょへにょと眉毛を下げて、しかし掴んだ肩を離さない目の前の男が少しだけ可愛らしく見えたのは…多分幻覚。

    「…まぁ俺も素直じゃないから、さっき嘘はついた」

    「はい?」

    「お前と会えないのは、たった一日だって寂しいよ」

    散々毎日やかましい男といるものだから、このテンポに慣れきってしまった。
    むしろこのうざったさがない方が、なんだか心に穴が開いたかのような感覚になってしまう。
    曖昧に笑う彼が俺の心の導火線に火をつけたのだから、こればかりは曖昧なままではなく責任をとって欲しい。




    「責任…はっ、そういえばお兄さんって今」

    「未成年だけど」

    「……やっぱりこの話ナシにしましょう、後回しにしましょう。またいつか大きくなったら話し合いましょう、ね?」

    「だめだ、逃さない」

    「助けておまわりさーーん!!!!!!!!」

    「お前が呼ぶのかよ」
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