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    黄月ナイチ

    @71_jky

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    黄月ナイチ

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    堕天オンイベ2023【日月星辰】にて展示していたルビーさんとギョーマンさんのワンシーン。ダウンロードありがとうございました!

    接触禁止のstigma   魔龍騎兵は戦略兵器である。近年対空戦力の発展が目覚ましいとて、それでも圧倒的な空の覇者である。ロケット魔法の轟音と共に空を駆ける雄壮なる飛行形態、からシームレスに変形し大地を掴む堂々たる人型形態。灰白地に紅い鳥の徽章の竜の勇姿を眼前に鑑賞できる役得もさることながら、歴代最強とも称される傭兵戦力としての働きも期待通りのものであった(往々にしてやり過ぎるのは玉に瑕だが)。
     彼らの出撃は常に一方的であり仮に抵抗を受けたとしても、愛情深い魔竜の守りは騎手への害を許さない。なので、ルビーが顔に傷を作ってくるというのは大変に珍しいことであった。
    「怪我ッ!」
     戴天市に帰投していた彼女と廊下ですれ違い、めざとくその生傷を視認したギョーマンは耳を逆立てて驚いた。呼び止められたルビーがうんざりと目を細めて吐き捨てる。
    「ただの擦り傷だし」
     擦り傷というには小さな切り傷に近いものだが、それにしても生々しい。ギョーマンは眼鏡を持ち上げしげしげとそれを観察した。
    「珍しいこともあるもんだ。天変地異の前触れかね」
    「喧嘩売ってんの?」
     この度の出撃について簡単な報告は受けていたがそれは華々しくも因業な戦果の話であり、彼らの損害については後回しになっていたのであった。
     ささやかとはいえいかにも目立つ顔の傷である。天下の魔竜騎兵には不相応だし、何より妙齢の女性には気になるものではないだろうか。
    「それくらいなら私でも……」
     きっと療術で治してしまった方が早く綺麗になるだろう、一歩踏み出したギョーマンが何の気なしに手を伸ばしたのはそんな親切心だった。
    「——触んな!」
     と、ルビーはきつく声を荒げた。勢いよく手を振り払われたギョーマンは気を悪くするよりも驚いて瞠目した。その手のひらに灯した療術の光は効果を成さないまま掻き消えたのだが、その一瞬前にルビーの眼差しに怯えが滲んだのが見えたからだ。窓の外のカトラスがさっと色めき立ち、ギョーマンは自身の不調法を悟る。
    「……すまない。不躾だったね」
     紳士的に詫びると、ルビーは我に返ったように口を噤んだ。視線を遮るように頬の傷に手を乗せて、きまりが悪そうに言う。
    「自分でするから。手当は」
    「ああ、うん。救急箱ならアマチくんのラボが近いかな」
     無意味に両手で眼鏡のつるを押し上げながら返すと、ルビーはなおざりな相槌を残してギョーマンに背中を向けた。促されたカトラスが威嚇の声を上げるのが聞こえる。大丈夫だよカトラス、とルビーがその竜を宥めるのも。
     ギョーマンは詰めていた息を吐き出し、襟を正した。あの目の色は彼女の疵であろう、と思う。戴天党というところは後ろぐらい過去を背負う人材が集まりがちで、大なり小なりそういったものを抱えているものが少なくない。どんなに強い人間にも存在する疵がある。気軽に見てよいものではなく、触れてよいものではないだろう。
    「やれやれ」
     元々の予定に向かうべく歩みを再開しながら、そもそも許可なく妙齢の女性に触れようとしたのが良くなかったのだとギョーマンは一人頷いた。相手が誰でもそうだろう。療術を使う者としての悪い癖であったと反省し、次に活かそうと切り替える。
     後日ルビーの頬は痕も残さず綺麗になっていた。ギョーマンが頬を指して痕が残らなくてよかったねぇ、と頷くと、ルビーは複雑怪奇な顔をして要らない心配をどうも、と素っ気なく言うのだった。
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