ことを起こすのに必要なものは何だと思うか、とヘリオスが尋ねてきたので、アマチはその問答に付き合うことにした。
こと、と言うのはヘリオスとの問答においてしばしば現れる単純化された言葉だが、つまりは彼もしくは彼らが唱える荒唐無稽、星を目指すという夢物語についての計画のことである。ヘリオスは時折、知っているはずの真理の答え合わせをするような話題を仕掛けてくる。
つい先刻まで二人で遊んでいたカードがちょうど手元にあったので、おさらいのがてらに簡単な手品を披露することにしたアマチは手際よく伏せたままのカードをぐるぐると掻き回し、その中の一枚をめくった。
「心と血肉」
宣告と同時に現れたのはハートのカード。ヘリオスは少し目を瞠り、それから視線だけで先を促す。
「想像力と意志」
現れたのはクラブのカード。アマチの指先がそのマークの部分をなぞったので、ヘリオスは感心して頷いた。
「そうなのか」
「そうらしいです」
アマチは少し手を迷わせて、それから一枚を選んでみせた。現れたのはスペードのカード。
「剣、……武力だな」
ヘリオスが先手を取って呟くと、アマチは良く知っていますね、とばかりに眉を上げた。そして最後の一つを探し、めくる。現れたのはダイヤである。
「経験と金。ですね」
「なるほど?」
かつてビル・スミスに向かって「足りないのは俺以外だ」、と言ったヘリオスはアマチが示したカードのうちの一つを拾い上げた。ハート。心、血と肉。不死者ははじめ、それしか持っていなかった。
次にクラブ。星を目指そうという意志を持った。
「……アマチお前、なんか目印でも付けてんな?」
「さて……」
「イカサマじゃねえか、さっきの勝負はノーカンな」
ヘリオスは毒づいて、残りのカードに触れた。スペードとダイヤ。それから、アマチに目を移してニヤリと笑う。
手札は揃った。身体が魔法を失い始めているこの期に及んで!