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    黄月ナイチ

    @71_jky

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    黄月ナイチ

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    「ケレスさん、街の地図があったらちょっと見せてもらえませんか」
    「……はい。少し待ってくださいね」
    と、話しかけてきたエマソンを比較的近い位置から見上げることになったケレスは如才なく微笑みながらさりげなく距離をとり、そそくさとその陰から出た。長身の部類であるケレスを見下ろす形になる人物はそう多くはないし、なにより想定外に近かった。資料の類をしまった棚に向き合うと、勝手知りに目的のファイルに指をかける。
    「縮尺はどのくらいで?」
    「街全体のと、街道と隣の街がわかるようなのがあれば」
    「街全体のなら複写がありますけど広域図だとこっちには大きいのしかありませんね」
    「あ、じゃあここで写してってもいいですか」
    ケレスは少し考えて良いですよ、と答えた。執務室には書類机があり、来客用のテーブルセットもある。断る理由もないだろう、エマソンはもとよりそのつもりであったのか紙と筆記用具を持参していた。許可を得てぱっと愛想笑いを向けると、その筆先は存外意志的な動きを見せ始めた。
    「総裁補佐官、どうでした?」
    素早く正確に写し取っていくその技術に内心で感心しながら、ケレスはふとそのように尋ねた。エマソンの返答はわずか一拍、遅れたようなそうでもないようなという挙動を見せた。
    「どう、とは?」
    「いえ、総裁直属の方なので僕はあまり直接付き合いがなくて。人間の方から見た印象ってどうなのかなと」
    「俺らもそんなに……」
    エマソンたちがシバと共に不死者の捜索にあたっていたのはほんの数日である。ナイトワットの案内によると不死者探しは中止、シバは一足先に戴天党本部に帰投したということだが、それはおそらくエマソンが出会った自称不死者の男が「消えた」ことが要因なのだ。エマソンは確かに、シバについて少し知っている。しかしそれは、
    「秘密が多い方なんですよね」
    「それは——、」
    ケレスが先回りをするようにそう言ったので、エマソンは反射的に顔を上げた。どうしたのか、というように首を傾げられる。
    「そう、ですね。ミステリアスというか秘密主義というか」
    その端正な眼差しがエマソンの反応を面白がっているようにも見えたので、ぐっと堪えて当たり障りのない同意を示した。
    「自分のことをあんまり話さない人でしたね」
    「人間の方から見てもそうなんですね」
    エマソンはこれでいてオスカー・シャクターに選ばれてイスパノに派遣されてきた人員である。第二師団に貸し出されてはいても、機密と言われたことをおいそれと話すことができないのは承知の上である。
    「将来的には党の最重要人物にもなりえるので第二師団としてももう少し親密に付き合っていきたいんですけど、なかなか本心が見えないというか掴めないというかで、どうしたものかと思ってまして」
    エマソンは曖昧に頷いた。難しいことはまだ良くわからないが、ただ、どこか不安げにも見えた深入りを拒む背中が脳裏を巡ったので。
    「……優しい方だと思いましたよ、俺は」
    エマソンがため息をつくように言うと、ケレスら薄く微笑んでそうですか、と頷いた。
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