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    黄月ナイチ

    @71_jky

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    黄月ナイチ

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    飛行中の魔竜が自由落下の加速度の中にある物体を壊さぬように拾い上げるなど至難の業のように思えるが、なんとカトラスは見事にそれをやり仰せた。レコベルを視認した瞬間に慌ててその救出を望んだルビーはカトラスのその仕事を大いに褒め称え、感謝を示したものである。
    あとから意識を取り戻したレコベル本人が推測したところによると魔竜には荷重を低減させる魔法が備わっていて、それをなんらかの形で応用したのだろうということであった。
    それにしても拾ったばかりのレコベルの容態はそれはそれは酷く、生きているとも思えなかった。凍りついた体は触れるだけで壊れてしまいそうであったが、慌てて運び込んだ医務室の主人は「治せるかと思いますよ、たぶん」と安請け合いをした。
    「身体強化の魔法が奇跡的に適切な低温状態を作ったのでしょうね。……もちろん幼体成熟に特有の頑健さありきのことではありますが。壊死部分はクローン再生技術の応用で補うとして、療術士は呼ばないとですが」
    「治るならなんでも良いけど」
    「お金かかりますよ?」
    「このまま死なれても頑張ったカトラスに悪いからねえ」
    「新しい治療法を試してよければ勉強させてもらいますが」
    「治るならなんでも良いっつってんでしょ」


    治療の甲斐あって、意識を取り戻したレコベルはなんとオーパスの重要参考人であったらしい。とは言え知能と記憶の大部分を失って制御脳を搭載した姿は見た目通りに幼く、彼女が空から落ちる前にどんな人物であったのかはルビーには関係のないことであったが。
    「たすけてくれて、ありがとうございました!」
    「ま、良かったんじゃない。お礼ならカトラスに言って」
    「はい! カトラスさんも、ありがとう!」
    魔竜が大層ルビーに褒められたことを思い出したのか上機嫌に喉を鳴らすと、レコベルは急に電源が入ったように魔竜に備わっている魔法についての話を初めた。ルビーが呆気に取られて聞いているうちにその口上は不意に途切れ、また急に電源が切れたように推し黙る。
    「びっくりした。詳しいんだね」
    「……」
    困ったように俯いてしまったレコベルを前に、ルビーはキセルをふかした。カトラスと目を合わせて、小さく頷きあう。
    「レコベル、もしかしてカトラスに乗ってみたい?」
    「!」
    かけた言葉に、レコベルはぱっと表情を輝かせた。思いの外嬉しそうに迫ってきたので、ルビーの方が怖気付くほど。
    「とびたいです!」
    「怖くないの?」
    「? こわくないです。のれるんですか?」
    「さあ、それはカトラスが直ってからお願いしてみないとかな」
    「竜も、まほうでなおりますか? りょうじゅつなら、あたしが——」
    「ふふ、だってさカトラス。どうする?」
    カトラスは遠慮深く唸った。怪我はともかく、装備の方は療術で修理できるものではない。しかし、同乗の提案についてはルビーの気持ちのままに、とする態度である。
    「あんたの治療もまだあるんでしょ?二人とも治ったら一緒に行こうか」
    「はい!」
    大変いいお返事である。レコベルは空に視線を向けた。ルビーが日々我が物の如く翔ける空のさらに遠くを見つめる眼差しは自分がそこから落ちてきたことなどまったく気にも留めない様子できらきらと輝く。
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