なまめかしい白色の、つやつやとした花びら(正確にはそうでないらしいけれど)の上を細かなしずくが伝っていく。通学路に立ち止まってその様子を眺めていた不二に、河村は気配の隙間にするりと入り込むように声をかけた。
不二は笑顔で振り返った。作ったのではなく、そうなるだけだった。めずらしく。
雨は柔らかく、湿気だけを振りまくように降り、あたりを包んでいる。霧雨。
「おはよう」
大きな傘のひさしに隠されながら、不二は言った。河村は見上げるほど大きく、体の厚みはとても同年代とは思えないほどに逞しい。自分もいずれはこのようになるだろうかと思ってみて、骨格の違いとやらに苦笑する。
「おはよう。」
不二を持っていた傘の下に入れ、河村は応えた。不二の頭は自分の鼻先くらいで、制服に包まれた肩は意識するたびに意外なほどに細く薄い。
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