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    o_sirukou42

    @o_sirukou42
    くまちゃん

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    o_sirukou42

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    乳牛パロの子牛のフちゃまとの出会い部分です(モクフウ)

    乳牛パロ、子モフの出会い編 そんな折り、下草を踏みしめて歩く自分の足音に混じって、何か別の音がモクマの耳に届いた。なんだろう。警戒する気持ちがないわけではなかったが、直感的に危険なものではない気がしてモクマは音のする方へと自分から近づいていった。


    「どうして泣いてるの?」
    「っ!?」
     木影で縮こまりくぐもった嗚咽を漏らしている小さな生き物に声をかけると、その生き物は肩を震わせて引き攣ったような声を上げた。抱えた膝に顔を埋めていたその生き物が顔を上げる。
     モクマを見上げるその大きな瞳は涙に濡れていた。茶色の柔らかそうな髪の毛が木漏れ日に透けてきらきらと輝いて見える。その髪の色と同じ、茶色の艶々とした毛並みの耳を頭頂部に生やしたその生き物は、年頃はモクマとそう変わらなく見えた。茶色の毛並みの彼は目を見開いてモクマのことをまじまじと見つめている。どう身を処すべきか、迷っている風だった。
     モクマはその場にしゃがみ込み、少年と目線を合わせた。少年の瞳は涙で濡れているのに、怯えを見せまいとしているのがその表情からは窺えた。モクマは何度かまばたきをして、敵意がないのを伝えようとした。そうして、少年に自分の手を差し伸べてみた。
    「俺はモクマ。君は?」
    「私は……」
     少年はまだ警戒しているのかモクマの手と顔に探るように目をやりながら言い淀んでいる。改めて少年の身なりを見てみると、古い時代の礼服に似たものを着ている。丈の長いスカートのように見えるそれは確か袴と呼ばれるものだろう。幼いモクマには正確な知識がなかったが、上等な仕立ての衣服であることはなんとなくわかった。森に住む野生の生き物には見えないし、迷子にしてもなんだか事情がありそうだった。
     モクマは少し眉を下げて困ったな、という表情を浮かべた。と、その時。
    ぐぅ………。腹部から響いたその音に少年はぱっと自分の腰回りを両腕で押さえつけてモクマから目を逸らした。モクマはああ、と頷き、午後のうららかな日射しの中で表情を和らげた。
    「おにぎり持ってるんだけど、一緒に食べる?」
    「……おに、ぎり……?」
     俯いて唇を小さく噛んでいた少年は不可解そうにモクマを再び見上げる。
    「うん、ちょっと待って」
     モクマは背負っていたリュックを降ろし、地面に置くとごそごそと中を漁りはじめる。
    「はい」
     モクマが持っていたおにぎりは美術館に来る途中にあった昔ながらの土産物屋で買ったもので、その店で手作りされた家庭的な味のものだった。透明なラップに包まれたそれをひとつ少年に差し出すと、少年はしばしの逡巡の末にモクマの手からそれを受け取った。大人向けのサイズのそのおにぎりは少年の手にはやや大きい。両手でおにぎりを持った少年はおにぎりとモクマの顔を探るように見比べていたが、だんだんとその眉根が寄ってきた。
    「これは……食べ物なのか?」
    「うん、そのラップを開けて……」
     モクマは少年を手伝っておにぎりの上部のラップを剥がしてやった。少年は眉を寄せながらもモクマのすることを興味深そうに見ている。
    「梅干しが入ってるから、酸っぱかったら避けて食べてね」
     モクマは改めて少年の前に腰を下ろし、地面の上にナプキンを敷いて水筒と持っていたお菓子を並べた。モクマ自身は美術館に着く前におにぎりを食べていた為そこまで空腹を感じてはいない。水筒は蓋がコップ代わりになるタイプなので、お茶を注ぎながら少年の様子を見るともなしに見る。
     少年は海苔に包まれたおにぎりを見つめながらまだ迷っていたようだが、空腹に耐えかねたのかついにはむっ、とその先端に口をつけた。ずいぶん上品に口をつけるな、とモクマは思った。両手に持ったおにぎりを慣れない様子で食べる少年の姿はなんだか可愛らしく、栗鼠か何かのようだった。その身なりといい、育ちがいいのは間違いないと思わせる振る舞いの中にも年相応の子供らしさがあって、モクマは覚えず安堵していた。

     少年がおにぎりを食べ終わるのを見計らってお茶をすすめると、少年はやはりコップを両手で礼儀正しく持ち上げて口をつけ、空腹が満たされ少し落ち着いたのか居住まいを正してモクマに礼を言った。
    「モクマ、と言ったか。世話になったな」
    「ううん、残り物のおにぎりだし、大したことじゃないよ。美味しかった?」
    「食べ慣れぬ形だったが腹が空いていたからな」
    「おにぎりは持ち運びに便利なんだよね。今日のは店で買ったやつだけど、俺もおにぎりを作るのは得意だよ。塩を振ってから、こうやって形を作って……」
     モクマは手でご飯を握る真似をしながら楽しそうに話す。少年はそれをさも興味深そうに聞いている。
    「まだ母さんみたいに素早くは作れないけどね」
    「母親がいるのか」
    「? えっと、君は……」
    「私の名は、フウガだ」
    「フウガ」
     モクマは教えてもらった少年の名を口に出してみた。なんとなく、彼が纏う雰囲気に似付かわしい響きだと思った。
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