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    83_grmrs

    画質上げとかワンクッションとかでつかうよ
    ワンクッションをよく読んで自衛しろよ
    パス?「H]だよ
    でもR指定だ背後に気をつけな

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    83_grmrs

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    【ジエンド】読み上げて

    ##ジエンド

    「今なんと?」

     読み上げていた書籍から顔を上げる。エンドが不思議そうに聞き返す相手もまた、ガラス瓶を持つ手を止めて明後日の方を見上げていた。

    「何も」

     天井との境目である壁の一点を見つめる彼自身も、しらを切れるとは思っていないだろう。その証拠に、一切視線を合わせようとしないのだから。しばしの沈黙を挟み、留めていた手を動かし出す。この話を流そうという彼なりの逃げ方だ。いつもなら乗ってあげても良いが……。
     席を立つ。衣擦れや椅子が引く音で覚悟を決めたのだろう。再び手を止めた彼もまた、視線を下げて背後に立つワタシの足元を見る。彼の肩に手をおけば、強ばった肩がほんの少しだけ震えるのだ。彼の背に体重を少しずつかける。一つに括られた髪が露わにしている耳に口元を近づければ、逃げるように身を捩る。それでも大きく動けないのは持っている器材のせいか、預けた体重のせいか。それとも、本当は暴かれたいためか。

    「ジェンディ、何が良かったんですか?」

     子供たちに言い聞かせるようにゆっくりと、しかし声は高めよりも喉を震わすような低めで。彼の好きな声のトーンで囁けば、じわりじわりと耳が染まっていく。残された生身の肌のなんと正直なことか。
     口を一文字に閉じた彼は尚もまだ足元を睨みつけている。だがその態度が何を差すかなど、彼自身が解っているというのに。読み聞かせていたページに彼が気にかけるような品はなく、琴線に引っ掛かるような手法や技法もない。これはただの文学小説なのだから。ならば答えは一つ。

    「直前とその一つ前、どちらにしますか?」
    「おまっ…!!」

     飛び跳ねるように驚き見上げてくる彼に思わず笑みが溢れる。あぁ、この顔は図星だ。ワタシの声で聞きたかったものも、隠し通す気がなかったことも、暴かれたかったことも。羞恥の奥に潜む期待が抑えきれずに溢れているのだから。嘘が付けない彼に時折不安になるが、それはワタシだけに見せる気の抜けた仕草だということがそんな粗末な悩みを吹き飛ばす。

    「それが終わったらいっぱい読み上げますよ。
     他にもリクエストがあるんでしょう?」

    答えは返ってこなかったが、その頬は塗料でもかかったのかと言うほど赤く染まった。
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