吸血鬼さんと狼男くんのお話会いに行くのは、決まって夜。
ぼくは陽の光なんてへっちゃらだから何ともないけど、 は違うんだって。ほんと変なやつ!
帳の幕が降りた魔が蠢く森に、駆け抜ける影が一つ。人の形をしているが、人ではないソレ。しかし人と酷似しているソレ。唯一違う所はーーーー。
「おっ!聞こえる聞こえる!」
ピコピコと軽く動かす耳が、頭の上部に付いていたこと。人とは決定的に違う特徴を持つ影の主の正体、それはーーーー。
「おーーーーい!!!!!ルックーーーー!!!!!」
「……うるさいよこの馬鹿狼男。静かに出来ないの?」
そう、狼男だった。
「バカだとーー!?そんなこと言う奴がバカなんだからなーー!!」
「返し方が馬鹿そのものなんだよ。もう少し知性を身につけた方が良いね君」
「またバカって言ったなーー!!性悪貧弱悪魔吸血鬼!!」
闇夜の森奥深くにひっそりと佇む年季の入った屋敷。その手前で繰り広げられる漫才(違)が、神秘を微かに含む不気味な雰囲気をこれでもかとぶち壊しているのは言うまでもない。
しかしそんなことを気にする者は誰もいなかった。少年達も全く気にしてはいなかった。
「それで?」
性悪貧弱悪魔吸血鬼(長)と呼ばれた吸血鬼ことルックは、額に軽く青筋を浮かせる。
紋章を使いわからせてやろうかと思ったようだが、相手がとんでもない馬鹿(あまりにも失礼な表現)な奴だったと思いだすと、スッと怒りが引いていったらしい。
「ぬぐぐ……効いてない……!!」
「馬鹿なの?効くわけないだろ」
「うううううう〜〜〜〜!!!!」
「……馬鹿なことやってないで、ほら入りなよ」
「うん!!」
吸血鬼に一泡吹かせてやりたい!といった気持ちが強過ぎるあまり、そこに神経が集中していた狼男の少年。
だが吸血鬼の少年が放った一言は、彼の執着をあっさりと終わりへ導くのであった。
「本当に切り替え早いよね」
「そこがぼくの長所だからね!」
「褒めてないよ」
騒ぐだけ騒いだ少年達は、薄暗く怪しさが漂う屋敷の中へと消えて行く。
あとに残ったのは静寂のみ……だけではなく、高位の存在に怯えて隠れていた下級の魔に連なる者だった。脅威が去った後の自由を謳歌し始めるが、それはこの物語に必要としないので、ここで終わりである。
◼️
「暗過ぎる!明るくしてもいい?いいだろー?」
「僕は暗闇でも見えるから。君だって見えるだろ?」
「そうだけどルック程じゃ……。あ、暗いから性格も……」
「何?切り裂かれて森から追い出されたいの?」
「ごごごごめんなさいっ!」
薄暗く長い廊下の先は、遠くからではどうなっているかわからない。等間隔に並ぶ壁に設置された蝋燭は小さいもので灯りとして機能しているとは少年には思えず。しかし先に歩くルックは耳を貸すことはなかった。
「今度遊びに来る時は灯り持ってくるか!」と、意気込みつつ辺りを見回しながら歩く少年と少年の挙動を気に留めず進むルック。対照的な二人はそのまま言葉を交えることなく廊下の奥へと消えていった。
続く??(多分)