1122の日 ルクにょぼver前触れもなく突然現れ、自室の如く勝手に寛いでいく。傍若無人の極みを地で行く少年が少女の元に現れたのは、もはや恒例となっていた。何も持たない若しくは菓子などの土産を持って現れるのだが、今回の少年はどちらにも当てはまらなかった。
大事なものだと言わんばかりに大事に持つそれはーーーー。
「わぁ……!綺麗な花!」
鉢植えの花だった。興味を持った少女はソファから腰を上げ、少年の元へと駆け足で向かう。お気に入りの膝掛けや読みかけの本が床に落ちてしまったのだが、彼女の耳に入らない。少年……ルックは子供のようにはしゃぐ少女に、思わず呆れを含んだ笑みを零してしまった。
「ちなみにだけど、名前は知ってる?」
物欲しそうに見つめる少女に渡す際、花の名をさりげなく問いかける。思わぬ言葉に目を見開き首を傾げるといった仕草を見せた。それが意味するものは。
「……えっと、あの…………全くわかりません☆」
「だろうね」
考えるまでもなかった。
「ルックわかっててやったんです??性格悪くない??悪いですよね??」
「この花はガーベラって言うんだよ」
「無視!?」
持ち前の性悪スキル(※ありません)を発揮され軽く腹が立った少女は反論を試みる。が、全く相手にされず。それどころかスルーを決め込んだ少年は、勝手に話を進める始末。
「ル「色によって花言葉がそれぞれ違うんだってさ」
「へー……」
話す隙を与えずその上で少女の気を引けるであろう話題に、そっとすり替える少年。本当に口がよく回る男である。
そして案の定、少女も引っかかるのであった。
「気になる?」
「そう言われたら気になります……!」
ベクトルが花言葉に向いていることを確信し、ニコリ……いや、ニヤリと三日月型の笑みを浮かべる。
美少年と持て囃される(※本人は興味無し)ルックの笑顔を間近で直視した少女は、頬を紅らめーーーーるといった事は一切合切なく。むしろ早く教えろ!!と言わんばかりに、花言葉への興味が止まらない様子である。
「教えない」
紡がれた言葉に盛大にズッコケるという、伝統的な120%リアクションをお披露目するのであった。
「えーーーー!!!!教えてくれないんです!?」
「図鑑に載ってるんじゃない?」
先程の笑顔は何処へやら。いつもの無愛想な表情で本棚を指す。とどのつまり、自分で調べろ、と言うことだ。
「直接言った方が早いのに!?ほんっっっっとに意地悪ですね!!」
「うん、褒め言葉として受け取っておくよ」
この程度の悪口が少年に効くはずもなく。受け取ると言いつつ右から左にサラッと流した少年は、そのまま消えてしまった。
「あーー!!逃げたーー!!」
ルックのバカ!!バカ!!意地悪!!性悪!!体力無し!!パワー不足!!非力!!などとありったけの罵声を、彼が戻ったであろうデュナン方面へと放つ。
苛立ちが落ち着いたら少女は、改めてテーブルに置いたままの鉢植えの花を見つめる。
「ガーベラって言ってたっけ……うううう……!」
この花はどんな意味を持つのか気になって仕方ない少女は、絶対調べてやる!!と急足で本棚へ。図鑑を手に1枚目から入念に調べ始める。余談だが目次から調べれば……と言う考えは、彼女の脳裏に浮かぶ事はなかった。
脳筋……と言う言葉は、どうか胸にしまっておいて下さい。
◼️
少女が図鑑で調べる少し前に遡る。マクドール邸から戻った少年は、広間にある石板へ背を預けたままぼんやりと思考を巡らせていた。
(別に言っても良かったけど、それじゃ意味ないから)
(あのガーベラの色は、赤)
(意味はすぐにわかる、けど)
(君とそう言う関係になった時に渡せたら、って願掛けでもあるんだけど……そこまで伝わるわけないか)
少年が考える事を止めて少し経った後、意味を突き止めた少女の渾身の叫びがマクドール邸を震撼させたのだとか。
終
おまけ
「え、え、え、えーーーー!!」
「どうなさいましたお嬢様!?」
「ル、ル、ル、ルックそそそそうだったの」
「ルック!?またあの性悪クソガキが!?クレオさん!!パーンさん!!大変です!!」
「あ、あ、ああいじょうって、ぼぼぼぼくに」
「ななななななんですって…!?ああああああんのクソガキーーーー!!!!」
「「いいから落ち着けグレミオ!!」」
おまけ終