灰と燃えさし思えば、その日は朝からろくな事がなかった。
愛用の毛皮には虫が湧き、道具袋の留めは壊れ、携行食にはカビが生えていた。もともと運勢などは信じないほうだが、ここまで不運が続くなら慎重になった方がよかったのかもしれない。
きっかけは、ちょっとした近道だった。
長く曲がった道を省略するために草地を突っ切った後、ヒュンケルが体調を崩すまで数時間もかからなかった気がする。おそらく草地に埋もれて足元がよく見えなかったのだろう、鋭い草や木板の釘で足を切ると、そこから病魔が入るのだと聞いたことがある。
足取りもおぼつかない友の肩をかつぎ、手頃な廃屋に寝かせてよくよく症状を問いつめてみれば、それらしい切り傷と高熱が想定した病と合致した。
2848