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    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

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    POIPOI 162

    カルデアアンぐだ♀、恒常→青年実験アンデルセンとマスター藤丸♀

    あれやこれや霊基異常でカルデアに大人童話作家が爆誕してわくわく生活始まってほしい

    2021.3〜

    ##FGO
    ##アンぐだ♀
    ##カルデア時空
    ##青年実験

    三十九センチプラスマイナス最後の贈り物と弊害

    「アンデルセンって、別の姿で召喚されることもあるの?」
     某光の御子が別の霊基で何度となく召喚をされた頃に受けた質問だ。答えに迷うことはない。
    「他の場所で召喚される俺の話など知るものか! だいたいあいつらを見てみろ、黒歴史が目の前で自動再生されるなどろくでもない」
     あのドラゴン娘が目の前で未来の自分といがみ合う食堂。見慣れた光景だ。同じ記憶を持つ、全く異なる自分が目の前に現れるなどロクなものではない。──そう思っていたのだ。後から自分の身に起こることも知らずに。

    「あのね……この聖杯、受け取ってもらえる?」
    「今さら緊張することがあるのか? 俺がもういくつ聖杯を受け取ったと思っている」
     数え切れないほどの数。物好きにだって限度はあるだろう、引き際を知らないらしい。今回が初めてでもないくせして、緊張するように締まった顔つきで聖杯を捧げる女。
    「霊基を強化するために使える聖杯の量はこれが限界みたいなの。この一個もギリギリだろうって。これがアンデルセンに渡す最後の聖杯なんだよ。だから少し緊張しちゃった ……それに最後だと思うと少し、寂しくて」
    「寂しいだと? 何を言っているんだか。最後と言ってもまだ俺を馬車馬のように働かせるつもりのくせして、面の皮が厚いにも程がある! そもそもお前は既に三流サーヴァントには過ぎた量を注ぎ込んでいるだろうが」
     彼女の手から掠め取った聖杯を狭い霊基の中に押し込む。最早慣れたものだ。……だが、今回はどうも勝手が違った。

     これは「入りきらない」。直感にも近い感覚だった。この霊基に収める最後の聖杯は膨大すぎる。何がギリギリだ、溢れんばかりだろうが……。だがいらないから捨てる、という選択肢が取れるものか。他の者に譲ろうなど以ての外だ!
     無理やりこの霊基に過剰な力を押し込める。欲張るものではないと承知の上で。残念なことにこれを要らないなど、もう俺にはとても言えやしない。マスターが物好きならサーヴァントも然り。いつからこんな酔狂なことになったやら、見当がつかない。
    「アンデルセン、これ以上は……」
    「馬鹿め これはもう『俺のもの』だ」
     彼女が青い顔で止めるのを振り切った。霊基が軋むほどの圧迫をごまかそうと思うほどには、俺はすっかり絆されていたのだ。狭量にも贈り物をカケラでも逃さない。あぁ本当に残念で仕方ない、いつの間にか俺はすっかりお前に似てしまったらしいのだ。
     そうしてまるで圧をかけられた霊基が歪むような感覚が落ち着く頃には体感でかなりの時間が経過していた。

    「最後というだけのことはある。やれやれ、こんなものを押し込めようなど酔狂なことをした」
     無理に霊基へ馴染ませた魔力リソースにしては妙に馴染んでいるように感じる。ただのプラシーボ効果だ。まぁ実際にサーヴァントとして戦闘力が強化されたのは確かなことだが。
    「…………アンデルセン」
     彼女が向けてくる視線が刺さるようだ。文句のひとつも言ってやろうと彼女を見たところでおかしさに気がつく。彼女の背丈が縮んだように見えるのだ。確かめるように彼女の方へ一歩踏み出し、すぐさまぐらつく身体の違和感にしゃがみ込む。
     崩れ込んだ身体を気遣うように彼女が距離を詰めてきた。近くにしゃがみ込み、しかしその手は俺の肩に触れることなく宙に浮いている。
    「あの、アンデルセン、だよね……」
    「寝ぼけているのか マスター。ずっと目の前にいるだろうが」
     無理をした俺が耄碌するならともかく、何もしていない彼女がこの調子では話にならない。こんな時に仕方のないやつだ。しゃがみ込んだ際にズレた眼鏡のフレームを直そうと手を添える。視界に入った己の手の大きさに多大なる違和感。
    「……」
     今の身体はなんだ、どう見積もっても先程のものとは違う。彼女がいきなり縮むわけもない。つまりは、異常が起こったのは俺の方だ。はたしてこれが霊基異常で済むような状況か、霊基が歪んで即退去などとなったらまったくもって微塵も笑えない。こんなに時間と労力をかけて全て水の泡とは! そうなるにはまだ早い。 
    「おいマスター、お前から見て今の俺はどうなっている」
    「えっ、どうって、ちょ……落ち着いて、」
     存外に切羽詰まった精神状況で、彼女の両肩を掴み揺さぶる。彼女から見て俺の霊基はどのような状況か。パスは問題ないと思われるが、霊基の歪みは致命的ではないのか。……このままカルデアで問題なく活動ができる状態なのか。戦闘能力に問題は……あった方がまぁレイシフトに付き合わなくて済むのだろうが、スキルを封印されでもしていたら厄介だ。
    「はっきり言え、どうなんだ」
    「そんな、いきなりそんなこと、言われても……」
     彼女が言い淀むほど致命的な損傷や異常があるのならすぐにどうにかする必要がある。まだ退去してやるつもりはないのだから。
    「わたしは、か、かっこいいと思うけど……」
    「…………は」 
     目の前で湯気でも上がりそうなほどの彼女の様子に、改めて彼女の発言を反芻する。さて、何か自分とは縁遠い評価の言葉が通り抜けたような。

    (かっこいいとおもうけど、)
     ただの文字列の意味を頭の中で出力して、突如ぐらりと頭の中が揺らぐ。サーヴァントの霊基とはおよそ関係のない評価に身体が硬直する。静まりかえったマスターの部屋にマシュがやってくるまで、俺達は瞬ぎせずその場に固まっていた。



    子羊ではなく狼にも似た 2021.3

     霊基再臨によりサーヴァントとしての姿が変わる。それはいつものことだろう。
     夏に霊基を調整して水着になるサーヴァント達。まぁ、それも慣れていると言える。だが、このように自分の姿が大きく変わるとは夢にも思わなかった。
     やれ霊基のチェックだなんだと色々連れまわされた後でようやく落ち着いた頃には数時間が経過していた。今の自分の身体は聖杯による何かしらの影響を受けたらしいが、視線が高くなった程度で不調は見られない。サーヴァントとしての能力が衰えてはいないらしい、となれば流れるようにレイシフトへついていくことになったのだ。
     レイシフト前の休息時間にマスターの部屋でだらけて時間を潰す、この習慣すら霊基が変わる前と同じだ。
    「体調に問題はない。しかしまぁ、残念ながら霊基の形が変わった程度では労働から逃れられないらしいな」
    「レイシフトについてきてくれるのはありがたいんだけど……本当に身体は何ともないの」
     霊基に変化があったとはいえ、今回のマスターはいやに過保護ではないか。
    「僕の姿が変わったとはいえ、サーヴァントとしての性能にそう変わりはない。見た目の違いなどたいしたことではないだろう」
    「見た目以外も変わったでしょ 話し方とか、他にも色々……」
    「何を言うかと思えば、そんなことか。霊基の変化で多少精神が引きずられているだけのことだろう。毎年のサンタ騒動とそう変わらないよ」
     違うのは、これが夏の魔物や冬のサンタのせいではないということくらいか。
    「それに君は物好きにもこの姿が好みなんだろう」
     自分には向けられそうもない評価を得た姿だ。物好きなマスターの贔屓サーヴァントへの評価だとしてもそれなりに気分は悪くない。

    「……好みって、たしかにかっこいいとは言ったけど」
     口を尖らせもごもごと彼女が顔を赤らめるものだから、このままでは大層な評価であると錯覚しそうだ。彼女が以前に背の高い男が好みだと言っていたのを聞いたことがある。姦しい女どもに囲まれて尋問のように聞き出されていたのを偶然立ち聞きした。
     まったく俺には関わりのない話だが、なるほど普段の自分との距離の近さは男としての認識が薄いせいかと納得もした。だがまぁ、自分も生前はもっと背が高かったが、と勝手に脳内が彼女の好みと自分を擦り合わせようとしている。そのことに、残念ながらすぐ気がついた。──いつ油断したのか、そのように「もしも」と夢を見るほどには堕とされていたのだ。だが結局己の姿は彼女よりも幼なげなまま。話にならない。
     ところが今目の前には自分を見上げながら話す彼女の姿がある。背の高い男が好みだというのも嘘ではないらしい。彼女の反応を見るに、ろくでなしの自分でもその身長だけでそれなりによく見えているようだ。
     身長がどうだろうがサーヴァントなのは変わらない。これ以上を求めるのは不相応だ、そんなことは分かっている。しかし、目の前でこんな態度の彼女を見てしまっては歯止めがきかなかった。
     自分が彼女に男として見られているのだ。あぁ、その認識はダメだ。枷を緩めてしまうだろう。

    「マスター……いや、立香」
    「えっ、なに、急に どうしたのそんな、名前とか、」
     面白いほどの動揺は、子ども姿であったのなら決して見られなかっただろう。
    「なんだ、僕に名前を呼ばれるのは嫌なのか」
    「そんなことないよ」
     霊基の変質がこうも影響するものなのか たかが名前で、こんなに恥じらうのだから。
    「……あの、ええと、なんか距離近くない」
    俺達が座る位置は普段より遠いくらいだ。だというのに近いと思うのなら、変わったのは『精神的』な距離感の方だろう。
    「寝ぼけているのか 君はシミュレーター室で僕を抱き枕のように扱うこともあるくせに、今さらだとは思うけどね」
     詰めた距離に目を白黒させる彼女は根本的な間違いに気がついているだろうか? いついかなるときも、男と部屋に二人きりになるべきではないのだ。じりじりと獲物を狙うような張り詰めた空気の中、擦り寄るたびに赤みを増す彼女の表情に嫌悪感は見られない。それをいいことに彼女の脳に擦り込むように覚えさせる。
     目の前にいるのは子どもではないどこにでもいる男だ。まずはそれを理解させなければせっかくの身長というアドバンテージを活かせもしない。
     レイシフト決行まであと十五分。緩めた枷が外れてしまうまではさて、あとどれくらいの時間がかかるだろうか。


    二人の満点シチュエーション 2021.9


    「え、と……ほら、レイシフトの準備とかあるし、もう行くね」
    「待て、行ってもお前がやることはないだろう」
     レイシフト準備のための機器調整はこいつの仕事じゃない。逃げる口実としては下手すぎる。
    「逃げるな。今さらもう遅すぎる」
    「なに、遅すぎるって」
    「お前にとってはただのガキの延長戦だろうが……今の僕に抱き枕にされるだけで済むと思わない方が賢明だぞ」
     王道なら「俺をこんなにした責任を取ってもらうぞ」、だろうか。まぁ王道は僕の芸風じゃない。縁のない台詞だ。
     逃げ出そうと立ち上がる彼女を引き止める。ずっと触れられなかったのが、思い立てばあっさり腕の中に収まってしまった。こうなる前に止まるべきだったとは理解しているが、それだけだ。理解はあるが、駄目だとわかるが……それでもなお触れずにいられない。
    「……アンデルセン、そんな、」
     彼女の困惑は最もだ。今まで子どもと思って接した者が大人になって自分を害してくるなど報われないにも程がある。
    「もうっ! ただでさえかっこいいのにそんな、いきなり背とか伸びるし」
    「……は」
    「きゅ、急にグイグイくるし いつも私に興味ないみたいな顔してたくせにそんないきなりずるい! 私はずっとアンデルセンのこと好きなのに」
    「一体何を……っ」
     腕の中に収まっていた彼女が僕の首を捕まえて顔を近づけてくる。そう認識した頃にはとっくに、彼女に唇を奪われた後で。  
    「…………!」
     一拍遅れで事態を把握した心臓がうるさく音を立てる。先ほどまでこちらが優位を取っていたつもりが、追いやられている。そういう厄介な性質の女だと分かっていたのに、油断した。これでも、一度も体験したことのない口づけなのだ。いや、決して、乙女じゃあるまいし別にそんな大層な思い入れやこだわりがあるわけではないがそれを、こんな、勢いで奪われた。

     ここは夜景の見える公園だとか、満開の花畑だとか、そんなものとは比べ物にならない雑多な部屋の中。さらにはそれらしい言葉の交わし合いも、気持ちの見せ合いもすっ飛ばしていきなり。お前は別に構わないだろうが俺はそうでもない、とシチュエーションをダメ出しするために口を開く。

    「ちゅーしちゃった……」
     言葉にする前に、僕の胸元で真っ赤な顔の彼女が幸せそうにつぶやくものだから、さすがに文句を言いづらい。
    「……了承も得ず、随分と度胸があるのだな。だが焚きつけたのなら燃え尽きるまで夢を見せるものだろう? 恋愛経験のない男は夢見がちなんだ」
     どうやら姿が変われど、彼女に優位を取るのは難しいらしい。だがこちらも黙ってやられているばかりではないのだ。腕の中の彼女ともう一度口付けを。どうあがいてもこの場所は公園にも花畑にも変わりはしないが、彼女がこちらを向いて目を閉じて待っている。……それだけで充分なシチュエーションだ。少し屈み、たった一瞬触れるだけ。繰り返しあと少し、もう一回と欲張る。
    「ちょっ……まって、もう行かないと」
    「あと、一度だけ」
    「……」
     息継ぎの合間にレイシフトを気にする余裕があるなんて、これだから社畜マスターは。僕はそんな文句を言う時間も惜しい。苦情ならばどうか、全部あともう一度の後に。今日くらいは僕に優位を譲ってくれないか。

     ──まぁ、惚れた方の負けという言葉もある。それで言うのなら変化したこの霊基だろうが、いつまで経っても彼女には敵いそうにない。それが今後の最大の課題だった。
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