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    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

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    カルデアアンぐだ♀、マイルーム健やか睡眠

    2021.7

    ##FGO
    ##アンぐだ
    ##カルデア時空

    無礼講夢の中は無礼講

     アンデルセンはわたしの部屋を別荘かなにかだと思ってるらしく、よくわたしがいない間に好き勝手に部屋に来てベッドで眠っている。あまりにもよく眠っているから起こすのはなんだかかわいそうで、普段は目を覚ますまで時間をつぶすのだ。
     ――それが、今日はくたくたに疲れていて待てなかった。目が覚めるかもと入ったシャワーは眠気覚ましにはならない。もう寝るしかない。ドライヤーの音で彼が起きるかもなんて言い訳して、テキトウにタオルで拭いて済ます。
     眠気の赴くまま、慎重に狭いベッドの片隅へ潜り込んだ。

     ベッドの中は、先客のおかげで温かい。でも布団はやっぱりシングルに二人は狭かったかな、なんてぼんやり考える。
     それから、少しの緊張感。彼は微塵も気にしないだろうけど、こんなに距離が近い。起こしたらいけないと言い訳し、大体人のベッドで勝手に寝る方が悪いなんて開き直り手に入れた隣。今日は頑張ったから少しだけ、許されていたい。ぐっすり眠る彼の方を向きながらそう思う。
    「ん……」
    「!」
    物音は立てていないつもりだけど、隣から聞こえる寝言を聞いて固まる。もしかして起きるの? こんなタイミングで?
     彼は寝心地悪そうに寝返りを打つと仰向けから横向きへ。ベッドが狭いなんて配慮は少しもなく、わたしの肩にぶつかるように転がってくる。
    「ちょ、」
     声もあげたくなる。何の遠慮もなく伸びてきた手に捕まって、気がつけばすっぽりと彼の腕の中。至近距離で擦り寄られて頬と頬が触れ合う。悲鳴をあげてもおかしくなかった。一声発しただけで耐えたのを褒めてほしい。
     頭の中は何これ、どうして、とぐるぐる考えるだけで精一杯。彼はこんな体勢でも爆睡している。それで私は迷った末に彼の背中に手を回してみたりして、勝手に恋人みたいな気分で眠りについたのだ。
     朝起きた時には彼はわたしから背を向けるようにして眠っていた。昨日のことなんか何も知らず普通に熟睡して、寝返りを打った結果らしい。

     アンデルセンは抱き枕が好きだ。多分。

     それからというもの、わたしのベッドで眠る彼は毎回私が横に寝転ぶたびに抱きついてくるようになった。わたしは抱き枕にされるたびに使用料徴収とばかりに抱きしめ返す。朝になれば相変わらず昨日のことなどなかったかのようにそっぽを向いて眠っている。


    暴かれるまで無礼講

     マスターの部屋は俺の第二仮眠室のようなものだ。原稿用紙のない部屋で休むと休息の質が上がる。部屋の主人がいない間に活用している。
     その日は脱稿したばかりでインクの匂いなど嗅いでられるかとマスターの部屋に来て、ベッドに寝転がった。
     眠りと覚醒の狭間で、部屋のドアが開いた音やシャワーの水音を耳に入れる。どうやらマスターが帰ってきたらしい。だか、どうせマスターは帰ってきてすぐにベッドを使わない。もう少し、あと五分だけ。

     ……まどろみながら、かすかに掛け布団の隙間から入る冷気を感じとる。それから、すぐ近くの存在感。
    (…………は?)
     声を出さなかった自分を褒めるべきだ。マスターが隣で横になっている。
     薄々分かってはいたが、マスターは俺を見た目の通りに扱っているのだ。子どもであれば添い寝くらい何のことはないということか。――さすがに、気を抜きすぎだ。

     まぁお前が俺を男とも思っていないのは勝手だが……その代わり俺がお前をどう見るかもまた自由だ。くれぐれも忘れるな。
     それはほんの忠告のつもりだった。
     狸寝入りで寝返りを打ち彼女の手を引けば、恐ろしいほどあっさりと腕の中に収めることができてしまった。

    「ちょ、」
     マスターのなさけない悲鳴がこぼれる。さてここからベッドからつまみ出されるか、叩き起こされるか。もうこの部屋を仮眠室には使えないだろうことが少し惜しい。
     しかし、どうせ叶わないような感情に区切りをつけるには贅沢すぎる最後だ。どうせ相手は俺の抱く感情などつゆ知らず、悪ガキを叱る程度にしか思っていない。初めて腕に抱いた一瞬の感触だけを抱いて、後は全て忘れてしまえばいい。これに懲りたら部屋に鍵をつけろ。

     ――ところがいつまで経っても起こされない。それどころか、彼女の腕が俺の背中に回ってくるのだ。明らかに俺を起こさないため慎重に腕を動かしている。さらに距離を詰めてくる彼女は、さすがに俺を子ども扱いするにしては度が過ぎている。
     隙間なく触れ合った身体から感じる脈拍が恐ろしいまでに早い。体温が高く感じるのは俺のせいか、相手のせいか。
     つまりどうやら、状況を都合よく考えるに……。いや、ともかくだ。俺を子ども扱いしていないことは確かだ。

     マスターはしばらく心音や脈拍でやかましく存在を主張していたが、そのうち腕の中で本格的に眠り始めてしまった。だから彼女を起こさず、腕の中から解放するのには一苦労した。
     ……この夜のことが都合の良い錯覚ではないかと何度も同じようなことを繰り返したが、結果は変わらなかった。

     大人しく俺の腕の中に身を寄せてくる彼女は未だ、俺が寝ぼけてなどいないことを知らないままだ。それを告げるタイミングを、未だ掴めずにいる。
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