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    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

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    現パロアンぐだ♀、竹中先生×ぐだち夫婦

    2020.8

    ##FGO
    ##アンぐだ
    ##現パロ
    ##夫婦

    あなたに良いことがありますように 基本的には仕事において外出することが少ないものの、打ち合わせともなれば外に出る機会は多い。そんな風に外で長時間の仕事がある時、暇でもないはずのあいつが作って渡してくる弁当箱の中には俺の好きなエビグラタンがよく入っている。
     ちょうどいいサイズ感の小さなグラタンは、およそ子供向けと思われる風貌。グラタンの入ったカップの底には今日の運勢占いだのなんだの、と言った文字が印刷されているのだ。

    「今日のラッキーカラーはみどりいろ♡いいことがありそう!」
    「おつきさまをみるとねがいごとがかないそう♪」
     まさか内容を間に受けているわけでもないが、グラタンを入れた日にあいつがいちいちカップの底に書かれていた文字を聞くものだから、すっかり確認するのが習慣になってしまった。

     今日は久しぶりに朝から外出していて、昼になる頃にはすでに疲れ果てていた。箱を開けてみればグラタンが顔を覗かせる。仕方ない、食べたらまたカップの底を見ておくか……と白飯に卵と海苔のふりかけをまぶしながらぼんやりと思う。カニとタコの形のウインナーがグラタンの横に並んでいる。あいつは俺を何歳児だと思っているんだか、こんなおっさんが持参している弁当だとまだ分かっていないのか? 弁当を持参してから俺が生暖かい目を担当から向けられているのを知りもしないで。

    「ん……?」
     たどり着いたグラタンのカップの底にはいつも通りファンシーな文言が書いてあるはずなのだが。

    (好きな人に電話をかけると、良いことがあるかも♡)

    「なんだ、このド下手な広告文書は!」
     見慣れたフォントに寄せているが、これは手書きだ。漢字が多いのも真似として及第点にも満たない。わざわざカップを別のものにすり替えて、文字を書いて、その上にラップを敷いているらしかった。暇人なのか? ハートマークをつけるのをやめろ。スマホにいちいち出てくるリスティング広告か!? あれに似ている。『好きな人の名前を消しゴムに書いて使い切ると両思いになれちゃう♡』という生産性がないどころか消しゴムを消費しまくるおまじないとやらに。生産性も信憑性もないところが。もしや、立香は俺から電話がかかるのを待っているんだろうか。受話器の前に正座して、じっと眺めて待つあいつの顔がパッと浮かぶ。毎日飽きるほどに見ているのだ、そんな顔くらいすぐに思いつく。
    「あいつもそんなに暇でもないはずだろうが。……クソ、面倒だな」
      用事があるのならあちらから好きにかけてくればいいだろうに。暇人のお遊びに文句を言ってやろうか。

    プルルル…ガチャ
    「もしもし、竹中ですけど! 帰りに牛乳買ってきてくれる?」
    「切るぞ」
    「えっちょっと待って! 切らないで!」
    「それで? 何の用事だ」
    「アンデルセンが電話かけてきたんでしょ」
    「ワンコールで受話器を上げたくせに何を言っている。用件は牛乳だけか?」
    「牛乳はついでなんだけど! その……あー、電話かけてくれるかな? と思って、それだけなんだけど」
    「ーー電話をかけると良いことがあるらしいからな」
    「! うん、そっか」
    「まぁ所詮占いの結果だ。眉唾物だが……起こりうる良いことについて詳細が聞けるのなら、少しは電話をかけた甲斐があるんだがな。どうなんだ?」
    「あのね、明日はシチューだよ」
    「俺の買った牛乳で作るのか?」
    「うん」
    「やれやれ、結局のところ良いことにありつくには働けということか」
    「でも、他にも良いことあるよ」
    「何だ? 今度はプリンか、それともアイスか?」
    「食べ物じゃなくて……明日お休みが取れそうなんだけど」
    「そうか。……それなら今夜は、」
     
    「竹中先生、お食事中すみません! ……あ」

    「ーー悪いな、仕事が入った。続きは帰ってからにする」
    「あっうん! 午後も頑張ってね!」
    「ああ。じゃあな」
    ピッ……
    「休憩時間は業務時間には入らないはずだが。休憩中の俺の邪魔をしてでもぜひ話したい有益な情報なんだろうな?」
    「しっ……失礼しました!」
     見知らぬ若手社員が一目散に休憩室を出ていく。この程度で退散するような用事ならば、休憩が終わった後でも問題はないだろう。それにしてもーー。

    「『明日の休暇』が俺にとっての良いこと、ときたか」
     あざとくなったものだな、やれやれ一体誰がそんな風に育てたんだか。今夜にでも問い詰めて査察してやろうか。
     明日が休暇なのはあいつだけではない。二人揃った休暇など、いつぶりだったか。
    「少しでも明日に仕事を残しては、いつまでも恨み言を言われそうだ」

     改めて午後のスケジュールを確認しながら、最後まで残しておいたハンバーグを腹の中に片付ける。必ず夕方には家に帰らなければと誓いながら、先ほど追い出した社員の用件を聞くために休憩室を出る。ーー今日の午後は少しばかりやる気を出すとしよう。
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