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    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

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    カルデアアンぐだ♀

    誕生日お祝いアンぐだ♀SS
    2020.4

    ##FGO
    ##アンぐだ
    ##カルデア時空

    主役は蚊帳の外「サーヴァントの誕生祝いだと?もう死んでいる者の何を祝うつもりだ」
     ハイレベルな料理の並ぶ食堂。そのど真ん中に座らされている彼とセットで見ると何てことはない子供のお誕生日会。……不機嫌そうにワイングラスの中のぶどうジュースを飲み干す表情はとても子供のそれではないけれど。
    「こういうのは気持ちの問題というか……ほら、せっかく皆お祝いの会を開いてくれたし!」
    「あいつらは『お祝い』に託けて飲み食いしたいだけの暇人だろう」
     賑わう会場は誕生日当日を迎えた本人には見向きもせず、勝手に飲んだら食べたりして楽しんでいる。
    「あー、これは料理が美味しいのが原因で、ちゃんと祝う気持ちはあると思うよ?」
    「別に構わん。元より祝われるつもりなどないからな」
     そう言いながらケーキの上にあるチョコプレートを齧っている。
    「じゃあ少しだけ抜け出して、わたしと散歩でもどうですか……?」
    「馬鹿なのか? ここで飲み食いする方が有意義に決まっている。散歩とは何だ、この色気の1つもない建物のどこを練り歩くつもりなんだ?」
     相変わらずのつれない返事に苦笑する。

    「だが、まぁ……こんな場所に居続けるのも据わりが悪い」
     軽く咳払いをする彼の目線は全くこちらをみていない。ぶどうジュースを見つめたまま、どこか小さく揺れている気がする。
    「酔い覚ましにでも付き合ってもらうとしようか」
     ふてぶてしい言い方なのに、控えめにこちらに伸ばしてきた手をそっと取る。まるで舞踏会にでも誘われたみたいだ。

     主役を連れ出すなんて、何だか悪いことをしてるみたい。そう思いながらそっと食堂のドアを開ける。


    「怒られたら、後でフォローしてよね」
    「フォローだと?俺が居なくなったことくらい奴らは気にしていない。むしろマスターを連れ出したと怒りを買うのは俺のほうだろう」
    「私は主役じゃないんだから大丈夫だって!」
    「はぁ……そう思っているのはお前くらいのものだ」
     冷ややかな目線でそう言うと、それきり黙ってしまう。彼に手を引かれて歩いているだなんて、何だか不思議な感じだ。
     このカルデアに召喚されてから随分長い、所謂古参とも呼べる彼との付き合いは長い。いつも落ち着きがあって、マスターになりたてのわたしをそれとなく支えてくれた。(本人は指摘したら絶対に否定するけど)

    「……アンデルセン、何か欲しいものはない?」
     誕生日の彼には特別なプレゼントを渡したくて色々考えていたのに、思いつくものはなんだかどれもありふれているような気がして。……一番だと、特別なのだと伝えるには印象が弱い気がして。サプライズも良いけれど、きっと直接聞いた方が間違いないと思ったのだ。
    「欲しいものだと? そんなもの休暇に決まっているだろう、馬鹿め!」
    「あっ、お休み以外でお願いします」
    「それなら欲しいものなど聞くな!」
    「だってアンデルセンがいないと戦闘が不安だし……」
    「俺よりも戦闘狂のやつらが役に立つだろう。――回復を担当できるサーヴァントも増えた」

    「やだ! 回復だってしてほしいけど……ずっとレイシフトについてきてもらってアドバイスもらってるでしょ? 次も助けてほしいの!攻撃とか、回復とかじゃなくてもっと、精神的な、その、支えにしたいというか……」
     口に出しながら、これはもしかしてこれ、すごく恥ずかしいことを言ってるんじゃないかな、なんて段々と思ってきて声が小さくなる。
     彼に頼ってしまっているのは自覚している。だけど精神的な支えにしたい、だなんてちょっと大胆すぎただろうか。彼のあきれた顔が想像できてしまう。

    「……休暇以外に、お前が俺に渡せるものはあるのか?」
    「えっいっぱいあるよ、休暇以外なら何でも!」
    「何でも、か」
    「うん、私ができる範囲なら……」
     お世話になっているお礼がしたい。それ以上に好きな人をお祝いしたい、わたしの自己満足だ。できるだけ喜んでもらえるものを渡したい。さすがにあまりに高いものは難しいけれど、そんな無理難題を押し付けてくるような人ではない。何でもできる、と言っても実現できる範囲のことしか頼まれないだろう。
    「そうだ、この間肩凝りそうって言ってたよね! マッサージとかしようか?」
    「いや、結構だ」
    「えっと、じゃあ良いペンとか、インクとか」
    「まさか贈り物ですら仕事に直結するとはな」
    「それじゃあ、ええと……」
     何をあげれば、喜んでもらえるだろうか。私にできること、あげられるものをあげてもどれも却下されてしまう。
    「ーー本当に俺の欲しいものを寄越す気があるのか?」
    「それはもちろん!」
     途端に身体が引っ張られる。それは返事をし終わるかし終わらないかのタイミングだった。
     首元に小さな頭が触れている。キラキラの髪の毛が頬と首をくすぐっている。
    「え、あの、アンデルセン⁉︎」
     抱きしめられている、あのアンデルセンに。
    「……お前の時間が欲しい」
     耳に息がかかる。時間って、何なの。
    「ーー明日の、朝まで」
     トドメを刺される。
     朝まで、時間が欲しい。ーーわたしの。それって、それはつまり。

    「……何を赤くなっている。ただのエイプリルフールだ!」
     あっさりと身体を解放されてしまう。
    「これに懲りたら『何でも』などと安請け合いはしないことだな! ーー俺の誕生日祝いなんてものは今更必要ない。さて、酔いも覚めた、食堂に戻るぞ。まだ一番大きいチキンを食べ切れていない」
     そう言ってすたすたと歩き出してしまう。待ってほしい。

     自分だって耳まで真っ赤になってるくせに。
     だってエイプリルフールって昨日のことでしょ。今日は違うよ。
     
     言いたいことも言わせてくれない。酔いなんて全然さめない、身体のほてりも消えてくれない。慌ててズルい男の背中を追いかける。
     
     ……誕生日プレゼントは時間でも良いよと言ったら、この人はどんな顔をするんだろう。
     パーティが終わった瞬間にこの人を逃さず捕まえる方法を考えながら、わたし達は何事もなかったみたいに食堂に戻っていった。
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