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    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

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    カルデアアンぐだ♀、付き合ってる時空

    2020.6

    ##FGO
    ##アンぐだ
    ##カルデア時空
    ##恋人

    ラスベガスの眠らない夜「もう一戦!」
    「そう言って何戦俺を付き合わせたと思っているんだ。一戦も勝ちを拾えないのは明らかにお前の不手際だぞ」

     幸運を引き寄せる能力が低かろうと、それを補って余りあるほどの観察眼。ブラフが上手い、なんてレベルじゃない。何度再戦を挑んでも結果は覆らない。
     ポーカー……それも一対一のヘッズアップ。何度やっても勝てないこの勝負にどうしても、一回だけ勝ちたい。

     「勝てたらどんな願いでもできる範囲で一つだけ叶えてやる」とアンデルセンは言った。できないことは言わない、彼らしい建設的な意見だ。
     それは、暇つぶしに始めたこのゲームが五回目くらいになった頃の話で、あきれたようにそんなことを言う彼を前にわたしはムキになった。あれからもう、何回ポーカーをやったか数えていない。
     おかしい。ポーカーっていうのはこんなに勝てないものなんだろうか。まさか、イカサマでもしてるんじゃないのか。疑ったところで、じっと見つめても特におかしなところのない所作。これじゃイカサマしていたってわたしには見抜けもしない。

    「人には向き不向きがあるとは言うが……こうも手本のような様を見せつけられるとはな!」
     わたしだってこんなに勝てないとは思っていなかった。他の人とポーカーをして勝ったことだってたくさんあるのに、どうしてこの人には勝てないんだろう。
     「しかしまぁ、ここまでして俺に叶えさせたい願いがあるのか? 負けが続いて気に入らないだけならもうやめておけ」
    「……叶えてほしいことがあるの。一回だけでも勝ちたい」
    「珍しいじゃないか。だいたい俺を従わせるのなら令呪があるだろう。何をそこまでこだわる? まさか、令呪で強制的に従わせるのではなく、あくまでも任意で従わせることで精神を掌握した気分になって悦に浸るつもりか? 随分と偏った嗜好だな。俺もさすがにフォローきれない」
    「勝手に人を変態みたいに言わないで!」
     何度も勝てなくてムキになってしまったのも理由の一つだけれど、わたしのお願いしたいことはきっとこんな機会じゃなければ叶えてもらえない。それに令呪を使っても、意味がない。

    「どれ、試しに言ってみろ。お前が勝てるまでゲームをするよりも、奇跡的に俺の気分が乗ることに賭ける方がまだレートが高い」
     悪そうな顔。とてもお願いを聞いてくれる表情はしてない。こんなんじゃ聞くだけ聞いて辱められて終わりという予想しか立てられない。それでも確かにポーカーじゃ、後何回やっても勝てそうにない。

    「その! ……今夜は、ここに、泊まっていきませんかっ!」

     まるで時間が止まったよう。空気が凍る。やっぱり、こんなの言うんじゃなかった。「寝物語が必要か?」と子供扱いされた方がまだ良かった。だってこの間は、この空気は、決して意味が伝わってないわけではないと分かってしまう。

    「お前は馬鹿だな」
     いつもの空気が戻ったのを感じて肩の力が抜ける。あぁでも結局返事はごまかされてしまったな。
    「こんな手軽かつ難易度の低い願い事のせいで三十ゲームも付き合わされたのか? 俺は。お前の人に言えない趣味嗜好が野晒しに暴かれるかと思ってテンションも高々に聞いてみればたかが同じ施設内の部屋移動とは傑作だな!」
     どれだけ物凄い願い事が想像されていたんだろう。それでも彼からすればつまらない願い事だって、わたしにはこんな機会がなければ伝えるのも難しかった。十分に人に言えない趣味嗜好で、任意的に叶えてほしい願い事。……結構頑張ったんだけどなぁ。
    「大体ここに泊まるなんてゲームでお前が勝てなくともいくらだって……」
    「え」
     途中まで言いかけて、珍しく止まった彼の言葉を脳内で反芻する。いくらだって、なんなの。ーーそんなのは彼の表情を見ていれば問い詰めなくたって分かる。
    「そんなことはさておき。ゲームで散々使った頭を冷水でもかぶって冷却してさっさと寝るに限る」
    「あ、ちょっと!」

     細腕を両手で捕まえる。腕を掴んだまま部屋の入り口に向かっていた身体の向きを逸らす。
    「……シャワーは、そっちじゃなくて、あっち」
    「立香」
     こんな顔をしている時の彼は押しに弱い。
    「いくらだってって言ったくせに、嘘つくの?」
     彼は口は悪いし本当のことを全て口に出すわけではない。けれど決して嘘はつかない。言葉を大事にしているから。だから、自分の言ったことには責任を持っている。
    「はぁ……それだけやれてポーカーには勝てないなど本当にどうかしているぞ。スイッチが入ると厄介だな。ああくそ、本当に見事に絡めとられたものだ」
    「?」

     文句を言いながらシャワーブースへ向かった彼が戻ってくるまであとどれくらいか。何度やっても勝てなかったカードをしまいながらシャワーの音が消えるのを待つ。
     さっきのやりとりを思い返してはベッドの上をゴロゴロと転がる私の元にやたらとシャワーの時間が長い彼が戻ってきたのは、それから一時間も後のことだった。
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